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●2025年9月号
■ 参院選結果から政権交代の展望を考える
    宝田 公治

■ はじめに

筆者は本誌で何度か立憲民主党(以下、立民)を中心とする「政権交代」の展望を述べてきた。本誌2月号では昨年の総選挙をホップ、今回の参院選をステップにしようと訴えた。参院選では、衆院選に続いて自公政権を過半数割れに追い込むことができた。しかし、肝心の立民が勢力拡大にならず、国民民主党(以下、国民)と参政党(以下、参政)が躍進し、野党が分散・多党化する状態になった。この状況下での政権交代の展望はあるのか。また、何故参政が大躍進できたのか、参政の本質は何なのかも分析する。
   
   

■1. 参院選の結果をどうみるか

本誌8月号『足立論文』に概要が述べられているので参考にしてほしい。今月末には各党の総括が出そろうだろうが、現時点で私なりに整理してみたい。
   
   
(1) 自民党(以下、自民)は、1人区で14勝18敗と負け越し、52→39議席と大敗した。比例区でも前回(2022年参院選)比▲545万票1280万票に激減した。一番の原因は、最大の争点となった物価高対策への無策と対応の遅さであった。加えて「裏金問題」の真相が未だに解明されていないこと、「企業・団体献金」問題が解決されていないことなどである。
   
   
(2) 立民は1人区で候補者の一本化が一定進んだが、議席は増減ゼロであった。比例区は、投票率16.46%の+670万票と自民・公明党(以下、公明)・日本維新の会(以下、維新)・共産党(以下、共産)4党で▲約1060万票の合計1730万票の行先を考えると、立民の比例票740万票(前回比+63万票、衆院選でも比例区は微増だった)は、大敗とまでは言えないにしても敗北と言わざるをえない。結果、比例票は国民・参政の後塵を浴びることになった。立民のキャッチコピー「物価高からあなたを守り抜く」は、衆院選の「分厚い中間層の復活」よりは分かりやすかったと思うが、それだけの問題ではなさそうだ。終盤の失速は、日常闘争・組織力の弱さとSNS活用の遅れ(後述)にあると考えられる。
   
崖っぷちの社民党(以下、社民)は、比例票122万票で1議席を獲得するとともに、得票率2.06%で政党要件を確保した。よく踏み止まったと言えるが、今後の課題も多い。
   
共産は、衆院選に続き7→3議席に減らした。比例票も286万票(▲75万票)だった。
   
   
(3) 自公の補完勢力「ゆ党」とも揶揄される国民は、衆院選に続き4→17議席に躍進した。比例区も762万票(+446万票)で比例野党第一党になった。
   
排外主義・右派ポピュリズムとも言われる参政は、1→14議席、比例区は前回の4倍増で742万票(+566万票)獲得し比例野党第二党に躍進した。
   
維新は5→7議席に増やしたが、比例区は437万票(▲340万票)と前回の野党第一党から大きく後退した。
   
   
(4) 国民の将来不安に応えない自公政権とそれを許している既存の野党、立民・維新・共産に強い不信がある。そこで、国民「手取りを増やす夏」、参政「日本人ファースト」のキャッチコピーやSNSを活用したライブ配信が若者やこれまで選挙に行かなかった層に刺さり躍進したことは間違いない。出口調査でも明らかなように、国民の支持は若年層が高く高齢層に向かって減っていく(自・公・立・共は逆)。参政は若年層の支持も高いが、50代15%、60代11%と高齢層にも一定の支持がある。
   
   
(5) 野党共闘・候補者調整については、32ある1人区の内17選挙区で一本化したこともあって、野党が18勝14敗で勝利した。しかし、参政が全選挙区で候補者を擁立するなど国民・参政・維新は、野党第一党をめざしていることや自公政権との連立の可能性もあり、今後の野党共闘・候補者調整への大きな課題である。
   
   

■2. 世論調査から

北海道世論調査会の分析(マスコミ9社、7月7日〜28日)から見ると

・躍進した「参政の大幅議席増」(朝日)は、
「よかった」52%、
「よくなかった」34%。
しかし、「参政に期待するか」(日経、毎日)には、
「期待する」28.5%、
「しない」51.0%

で期待感は大きくない。フェイクを含む過激な言動や思想・政策には、世論全体としては否定的である。

・「与党の過半数割れ」(朝日、FNS)を
「よかった」61.2%、
「よくなかった」25.8%

と民意は与党の過半数割れを好意的に受け止めている。

・「石破首相は辞任すべきか」(6社)に
「すべき」47.1%、
「必要ない」41.2%

と拮抗。

自民大敗の原因は「石破首相か党全体か」(朝日)に
「首相個人」10%、
「党全体」81%

と「裏金問題」をはじめ自民党そのものに嫌気がさしている。
   
・政権の枠組みについては世論もまとまっておらず、少数与党の下で政治勢力が分散する現状を肯定しているようだ。

・参院選最大の争点となった物価高対策・消費税減税については、「対策として」(ANN)に
「給付金」21%、
「消費税減税・廃止」65%。
「政府与党は消費税減税を受け入れるべきか」(毎日)に
「受け入れるべき」58%、
「必要ない」22%

と消費税減税は民意となっている。具体的なあり方については野党内でも様々であるが、野党第一党の立民を中心に民意にどう応えていくのか、その手腕が問われている。
   
   

■3. 参政党の評価

「日本人ファースト」を前面に掲げ支持を大幅に増大したが、神谷宗幣代表の外国人差別や女性蔑視の発言に「右派ポピュリズム」「排外主義」との批判も多い。本稿では、一つに何故支持が拡がったのか、二つに排外主義の実態、三つに参政党憲法草案(以下、草案)の特徴、四つに参政党の今後について述べる。今後、参政党がどうなっていくのか参考にしてもらいたい。
   
   
(1) 何故支持が拡がったのか
   
i. 一義的には、これまでに指摘した通り何も対処しない既成政党に対し、「消費税廃止」「日本人ファースト」を訴えた参政党に賛同が拡がった。
   
ii. 2020年4月の結党以前からいわゆる「政治学校」を開催している。ネット上で「通常は触れられない」「メディアが伝えない」情報との触れ込みで、「テレビや新聞の情報は信用できない」とマスコミ批判を拡散し、支持者を集めていった。この手法は今回の選挙でも同様である。真偽の不確かな言説を振り撒き、それに対し客観的な事実で反論しても支持者には通用しない。つまり支持者の間では、動画の交流サイト(SNS)によるエコーチェンバー(自分の価値観や関心のある情報しか見えなくなる状態)の結果、見たいものしか見えないのである。
   
iii. SNSの活用分析では、朝日新聞が6月17日から7月17日、Xでの9つの政策に関する投稿を分析している。1位は「外国人政策」、「物価高対策」は5位、「政治とカネ」は7位、「選択的夫婦別姓」は9位。6月17日では、「対トランプ」や「コメ」が上位だったが、後半では「外国人政策」が増えた。明らかに、SNS上と世論調査とでは異なる結果である。
   
谷原つかさ立命館大准教授が6月15日〜7月19日、各党のユーチューブ登録者数を調査しているが、参政党の急伸が際立っている。

  • 参政30万→45万(政党要件のある11政党中1位)。
  • れいわ38万→39万(2位)、
  • 国民25万→26万(3位)、
  • 立民4万→5万(10位)、
  • 社民0.5万→1万(11位)

を見れば、参政・国民の活用と比べ立民・社民の遅れは際立っている。
   
   
(2) 排外主義の実態
   
i. 外国人排斥では、「外国人は生活保護を受けやすい」「外国人の犯罪が増えて治安が悪化」など事実に基づかない情報発信。
   
ii. 女性蔑視では、「高齢女性は子どもを産めない」「男女共同参画は間違い」「選択的夫婦別姓に反対」など女性の社会進出を敵視し、戦前の「家制度」につながる考え。また、ジェンダー指数にも「世界経済フォーラムが勝手に決めているだけ、日本は日本でいい」とかけ離れている。
   
iii. 終末期医療の否定では、「終末期の延命治療費を全額自己負担にする」と「お金がなければ早く死ね」と言わんばかりで、「命の尊厳」を国家が強制的に奪うことになる。
   
   
(3) 明治憲法と同根の参政党憲法草案
   
参政党憲法草案(以下、草案)は、「日本独自の価値観に基づいた憲法を作る」と、「近代憲法の本質」を否定する。明治憲法と同根で、「時代錯誤」としか言いようがない。条文をみると

  • 前文で「天皇は、いにしえより国をしらす(統治する)こと悠久であり、これが今も続く日本の国体である」と、天皇主権国家を宣言している。
  • 四条で「国(国民ではない)が主権を有し、元号は天皇が定める」。二二条で「統治は、国体を尊重し」。九条四項で「教育勅語など歴代の詔勅は教育において尊重しなければならない」と教育勅語の尊重を明記している。など歴史の教訓に逆行するものである。
  • 五条一項で「国民の要件は、日本を大切にする心を有することを基準とする」とある。誰がどう判断するのか。国に対する不満を漏らしたら「非国民」とされるのか。
  • 七条三項で「夫婦は氏を同じくすることを要する」と夫婦別姓を明文で禁じている。
  • 二〇条一項で「自衛のための軍隊を保持する」と、軍事力の増大に歯止めがかからなくなる。街頭演説で「核抑止は安上がり」と訴えた。今回の参院選当選者125人中「核兵器を保有すべき」は8人で、そのうち参政が6人を占める。日本の侵略戦争を「大東亜戦争」と呼んで侵略を否定し、「自衛戦争という考えもできる」と美化している。治安維持法には「悪法というが共産主義者にとってのもの」と正当化している。

(4) 参政党の今後
   
i. 参院選の結果は、従来の「保守vsリベラル」の対立軸では説明がつかない。そこで「旧vs新」という対立軸が考えられる。参政党に投票した無党派層は必ずしも極端な思想を持っているわけではない、むしろ「政治参加」の意識を持って投票したと考えられる。そこに「政治参加」を意味する党名がハマったのではなかろうか。神谷代表が極端な思想を持ち、陰謀論的な要素を含んでいるにもかかわらず、選挙ではそれをあまり表に出さなかった。それで無党派層の10%強の獲得に成功したと考えられる。今後、本来の極右志向の政策を前面に打ち出して行けば、支持者が離れていく可能性もある。
   
ii. 一方で、フランスの国民連合(極右政党)が穏健路線に切り替えて勢力を拡大したように、参政党もその姿勢を変え、さらに勢力を拡大していく可能性もある。
   
8月5日、ドイツの2月総選挙で第二党(野党第一党)に躍進した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の共同党首クルペラ氏と神谷代表が東京で会談した。クルペラ氏から「政策やスタンスについては、現状を堅持して欲しい」と激励され、神谷代表も「近く欧州に行けたらと思います」と応えた。今後の動向を注視したい。
   
   

■4. 政権交代の展望

(1) 戦後政治の転換点となるか
   
i. 事実上の「政権選択選挙」と言われた参院選で自民党は大敗した。衆参両院で政権与党が過半数を割るのは、1955年自民党結党以来初めてのことだ。自民39議席も平成(1989年)以降では、89年36議席(土井たか子社会党委員長の「マドンナ旋風」)と2007年37議席(小沢一郎率いる民主党が圧勝。自民党は結党以来参院で初めて第一党から転落)につぐ低さだ。比例票1280万票は、歴史的大敗とされた07年でも1654万票、野党に転じた10年でも1407万票を獲得している。
   
「自民党覇権を前提とした政治システムの終焉」「政権政党としての耐用年数が過ぎた」「政権終焉へのカウントダウン」などとマスコミ、政治評論家から評されており、戦後政治の大きな転換点になる可能性がある。
   
ii. 以上のような状況にありながら自民党内の混乱は激しさを増している。石破首相は、選挙翌日7月21日の記者会見、7月28日両院議員懇談会、そして8月8日両院議員総会でも続投を表明している。これに対し党内での辞任要求は強まる一方である。しかし、声の大きいのは党勢を弱体化させた原因である「パーティー券裏金問題」の張本人「旧安倍派」の議員が多い。有権者はそのことを忘れていない。党内で石破おろしの声が強くなればなるほど、「石破首相は辞任する必要がない」との世論が多くなるという皮肉な結果となっている。
   
   
(2) 分散・多党化した野党
   
参院選でステップをめざした立民は、腰砕けにはならないまでもジャンプにつながるステップとはならなかった。国民と参政が躍進し野党が分散・多党化する状態になり、立民は政権の受け皿、野党の結集軸にはなり得なかった。
   
国民の玉木代表は、石破政権との連携は否定(石破以外の自民党政権は否定していない)する一方、「衆参の選挙で旧民主党的なものが否定された。新しい政治・政策を進めていきたい」と立民との連立にも距離を置いている。
   
維新の吉村代表も自民との連立を否定する一方で、野党中心の連立にも「政策ごとの協議はあるとしても、価値観の違うところ同士で成り立つのか」と否定的である。
   
参政の神谷代表は、自公政権には「政策ごとに賛否を決めていく」とし、「次の衆院選で50〜60議席取れれば、欧州のような小政党の連立内閣が実現できる。その一角をめざしたい」としている。
   
国民・維新・参政は、表面上は自民との連立を否定しているが、連立で支持を失うリスクがあるからであり、本音は連立もありというところだろう。いずれにしても、野党の分散・多党化によって野党連立政権が難しくなった。
   
   
(3) 立民を中心とする野党連立政権の展望
   
通常国会で廃案になった「ガソリンの暫定税率(1リットル25.1円)の廃止」について、立民・維新・国民・共産・参政・保守・社民7党は、8月1日から始まった臨時国会に廃止法案を共同提出した。8月4日、6与野党による実務者協議が開催され、廃止に向け動き始めた。
   
今後、優先されるべき課題は、「物価高対策・消費税減税」「企業・団体献金の廃止」「選択的夫婦別制」である。8月4日、臨時国会衆院予算委員会(選挙後の臨時国会で予算委員会が開催されること自体、少数与党ゆえ)で石破首相と立民野田代表の討論の結果、「企業・団体献金」について自・公・立・国4党協議が始まる(これ以前に野党をまとめる協議が必要ではなかろうか)。「消費税減税」については、4日、野党11党会派の政策責任者が会談した。立民野田代表は、「参院選で消費税減税を掲げた政党はたくさんあった。一致点をさがす」と強調している。ガソリン暫定税率廃止のように野党がまとまり、「熟議と公開」の国会を実現することが求められる。このような積み重ねによって、野党間の信頼と国民からの信頼が醸成されてくる。
   
日本の政治は、不安定の中で新しい時代になったと言える。多党化が本格的となれば、それは多様化する民意の反映であり意義のあることではある。そこで求められるのは、当面する課題も大切だが、その中にも未来を見据えたビジョン(持続可能性も含め)である。不安を煽り分断を生むポピュリズムには未来の創造力はない。以前から筆者が主張している立民の理念である「支え合う社会」(公助の充実)は一つの社会像となるのではなかろうか。立民はこの理念に基づいて国民の求める政策を野党第一党としてまとめ、実現することを積み重ねることで、立民を中心とした野党政権の展望が開けるのではないだろうか。そのためにも、組織力が低下する労働運動の強化と院内外の大衆運動の強化が求められる。
   
   

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