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●2024年7月号
■ 政権交代の展望
    宝田公治

■ はじめに

今年になって、島根1区衆院補欠選挙や各地の首長選挙で自民党公認・推薦の候補者が惨敗している。それは最近の世論調査の結果とピッタリ一致している。つまり、世論調査では、「政権交代に期待」が「自公政権の維持」を上回っている。昨年11月から表面化した自民党派閥による「パーティー収入裏金事件」(以下、「裏金事件」)により、自民党は国民から信用されなくなっているからだ。その背景には、物価高による生活苦と社会保障の負担増・給付削減などの不満・不安があり、それが自民党政治への怒りとなっている。与野党の攻防は、23日会期末をむかえる国会と7月7日投開票の都知事選挙で展開され、その結果が今後の政局に大きく影響するが、いずれにせよ今秋の可能性が高いとされる解散総選挙で、いかに野党・労働者・市民による政権交代を成し得るか、その展望を考えてみたい。
   
   

■1. 衆院3補欠選挙と最近の首長選挙

・(1) 衆院3補欠選挙は立憲が全勝
   
この分析は、本誌6月号『小笠原論文』『古山論文』に詳しいので、それを参照していただくとして、簡単に特徴を振り返ってみたい。
   
島根県は、1区を含め1996年小選挙区制導入以来、自民が議席を独占(全国で唯一)してきた保守王国である。島根1区は、96年以来、細田博之前衆院議長が議席を守ってきた。その細田氏の死去による補欠選挙なので、自民党は「弔い合戦」と位置づけ、錦織功政氏を後継に決定、公明が推薦した。立憲・亀井亜紀子氏は、連合島根が推薦、国民民主党(以下、国民)と社民が支援、共産は予定候補者を取り下げ自主支援とした。日本維新の会(以下、維新)は擁立を見送り、与野党一騎打ちの構図となった。結果は、亀井氏が約2万5000票の差で圧勝、錦織氏は「裏金事件」の直撃を受けた。本来の自民支持層の相当数が棄権や亀井氏に流れた結果と考えられる。NHKの出口調査によると、

亀井氏は
自民の30%、
公明党の40%余り、
維新の60%半ば、
無党派の70%後半の支持を得た。
錦織氏は
自民の70%、
公明の50%後半、
無党派の20%余りの支持だった。

時事通信では、自民支持層の2割が亀井氏に投票。2割が棄権ではなく相手の立憲に投票したと伝える。2割が1万票であれば、立憲にプラス2万票の効果があったということである。自民党にとって、この衝撃は大きい。
   
東京15区は9人乱立のなか、立憲・酒井氏が、共産(予定候補者を取り下げ)・社民の支援を受け、維新・金沢氏や都民ファースト・国民推薦の乙武氏に圧勝、自民は不戦敗だった。連合芳野会長は、酒井氏について「共産党の支援を受けることは、連合として容認できない」と、連合東京は自主投票とした。
   
長崎3区は、立憲・山田氏が、社民推薦、国民長崎・連合長崎の支援を受け(共産党は自主支援)、維新・井上氏との一騎打ちに圧勝した。自民党は不戦敗。連合芳野会長は「地域と一緒に全力で闘う」とした。
   
以上から言えることは、

  1. 自民党には台風並みの逆風が吹いている
  2. 有権者は維新よりも立憲に期待している。それは野党第一党の優位性と、大阪・関西万博への批判が影響か
  3. 連合の態度は、共産党が「支援」か「自主支援」かの違いなのか
  4. いずれにしても、候補者の一本化が重要。

   
・(2) 首長選挙は自民推薦候補が惨敗
   
詳細な選挙戦の構図まではつかめていないが、簡単に特徴を分析してみたい。
   
2月4日投開票の群馬県前橋市長選は、元民主党県議・小川晶氏が、連合群馬は推薦、共産は自主支援で、4期目をめざした自公推薦・現職山本氏に大差で勝利した。保守王国群馬での勝利である。小川氏は、政党の推薦・支援は受けず「市民党」として戦った。
   
衆院補欠選挙から1カ月後、注目された5月26日投開票の静岡県知事選は、立憲・国民・連合静岡推薦の鈴木氏(元浜松市長)が72万8500票を獲得し、自民推薦の大村氏(元副知事・65万1013票)、共産系無所属の森氏(10万7979票)に勝利した。川勝前知事の突然の辞任に伴う選挙で、最大の争点はリニア中央新幹線の賛否であったが、鈴木・大村両者とも多少の違いはあれリニア推進派、ともに「オール静岡」を主張。社民・公明は自主投票。選挙戦の構図だけみると、与野党対決となった。
   
5月26日投開票の広島県府中町長選は、寺尾光司(65才)氏が6242票を獲得、自公・連合広島・現町長推薦の川上氏(37才、3385票)、共産支持の二見氏(2120票)ら4人に圧勝した。川上氏は岸田首相の長男の応援も受けたが、大差で敗れた。保守対決とはいえ、地元広島での惨敗は岸田首相にはかなりの痛手である。
   
6月2日投開票の東京港区長選は、清家愛氏が、政党の推薦・支援を受けずに2万9651票を獲得、6期目をめざした自公・連合東京推薦の武井氏(2万8123票)に、少差ではあるが勝利した。
   
6月9日投開票の栃木県鹿沼市長選は、連合栃木推薦の前立憲県議・松井正一氏が市民党として戦い、自公推薦の小林氏に大勝した。
   
このように、自民が推薦した候補者は、地方選でも強い逆風にさらされ惨敗している。6月20日告示7月7日投開票の東京都知事選の結果は、今後の政局に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
   
   

■2. 世論調査から見える政権交代の展望

昨年11月、「裏金事件」がメディアを席巻するようになって以来、内閣支持率と自民党支持率が低下、立憲支持率が若干上昇、「政権交代への期待」が「自公政権維持」を上回っている。北海道世論調査会の分析(5月分)をたどってみる。
   
   
・(1)内閣・政党支持率と政権交代への期待
   
内閣支持率は、昨年10月に30%を割って以来、12月から今年5月の23.9%まで20%台前半が続いている。不支持率も11月から今年5月の63.1%まで60%台前半である。今年5月と1月の政党支持率を比較すると、

  • 自民24.3%(1月27.3%)、
  • 立憲10.3%(同6.8%)、
  • 維新5.7%(同6.9%)

である。自民が立憲の倍以上であるが、自民の支持率は20%台、その差は縮まっている。一方、立憲と維新の差は拡がっている。ちなみに、麻生政権末期つまり政権交代直前(2009年7月)の内閣・自民党支持率は今日と同様の数字だった。
   
これまで、政権交代への期待はほとんどなかったが、5月は6社平均で「政権交代を」の48.1%が、「政権継続を」の36.8%を上回っている(ちなみに2009年7月では「民主党中心の政権」44.6%、「自民党中心の継続」22.4%であった)。世論は政権交代を求めているが、現状維持を求める声も4割あり、野党の力量が問われている。

「野党に期待できるか」に対し、
「期待できる」は19%、
「期待できない」は73%

と厳しい評価である。
   
   
・(2)暮らしに関する政策にも批判的
   
岸田首相は、国会末解散に向け支持率向上の手段として、

  • 3月「春闘での賃上げ」、
  • 4月「国賓待遇での訪米」、
  • 6月「1人4万円の定額減税」、
  • 6月「イタリアサミットでの外遊成果」

などを画策した。これらに関する世論調査をみると、24春闘は「30年ぶりの賃上げ率」という結果になったが、

「物価上昇を上回る賃上げ」に対し
「実現する」4.8%、
「しない」92.2%。
「訪米」は忖度報道のおかげで
「評価する」50.4%、
「しない」37.2%

となったが、支持率上昇にはつながっていない。

「4万円の定額減税」については、
「評価する」41.0%、
「しない」56.4%、
「物価高対策になるか」には、
「有効」25.0%、
「そう思わない」66.5%

と評価されていない。減税をアピールするための制度・業務の煩雑さに企業・自治体から悲鳴・批判が上がっている。

国民の生活実感も
「景気がよくなっているという実感はない」80%、
「暮らし向きが今後はよくなるとは思わない」83%

と悲観的だ。

今国会目玉の1つである「子ども・子育て支援」については、
「評価する」28%、
「しない」69%、
「その財源を医療保険へ上乗せすること」には、
「賛成」33.0%、
「反対」58%

など、暮らしに関する岸田政権の政策は評価されていない。
   
   

■3.「裏金事件」の経過と課題

「裏金事件」について、岸田首相は「火玉となって、党の先頭に立ち取り組む」と大見えを切ったが、その後の対応は真逆である。
   
   
・(1)東京地検特捜部と国税庁の対応
   
東京地検特捜部(以下、特捜部)が大量の人員をつぎ込んで捜査したが、起訴したのは議員3人と安倍・二階・岸田派の会計責任者など7人だけ、派閥の幹部議員は不起訴だった。問題は、

  1. 派閥の会長や事務総長などの議員は起訴せず
  2. 何故3000万円未満は起訴しないのか
  3. なぜ3000万円未満の場合は収支報告書の修正だけで許され、政治家は脱税が問われないのか。

などである。
   
   
・(2)真相解明に後ろ向きの岸田首相・自民党
   
国民が求めていることは、裏金づくりはだれがいつ始めたのか。そして、その裏金が何に使われたのか真相を明らかにすることである。その上で、今後このような事件が起こらないように政治資金の規制を強化するのが筋である。しかし、これまでの自民党の対応は、反省のフリだけで、真相解明の本気度は伝わってこない。
   
   
 i. 派閥の解消
   
岸田首相は、みずから岸田派を離脱し、その後岸田派を解散した。続いて、安倍・二階・森山派、そして茂木派が解散した。本来、派閥は政策を研究することが目的の組織であり、裏金作りの組織ではない。従って、派閥の存在が問題なのではなく、裏金づくりが問題なのである。また、今回派閥を解散したからといって、今後派閥が再生されない保障はどこにもない。
   
   
 ii. 真相解明と国会政治倫理審査会
   
自民党による党所属国会議員へのアンケートは、「収支報告書への記載漏れの有無」と「その金額」だけの調査。その後、不記載のあった議員への聞き取り調査もしたが、報告書に議員名はなく、実態解明にはほど遠いものであった。裏金づくりのシステム構築に関わった疑いのある森元首相への岸田首相の聞き取りも形だけに終わった。
   
当初、裏金議員は国会政治倫理審査会(以下、政倫審)への出席をしぶっていた。その打開に向け、岸田首相みずから出席を表明、その後安倍派幹部らも出席したが、何一つ真相は解明しなかった。少なくとも、偽証罪が問われる証人喚問が必要だ。しかし、自民党が応じる可能性はないだろう。
   
4月4日、自民党による裏金議員への処分が出されたが、アンケートでの裏金議員85人のうち35人だけだった。岸田首相や二階元幹事長など安倍派以外の派閥トップは処分されず、「お手盛り処分」と揶揄される内容であった。
   
真相解明が進まないなかで、新たな疑惑が浮上している。それは、下村元文科相をめぐるもので、その1つは、下村氏が地元の会合で「森会長時代にキックバックをやっていたと認識している」との発言。もう1つは、2022年4月故安倍元首相も出席した会合で決まったとされるキックバックの中止について、「当時安倍派会長代理だった下村氏が、事務局長に複数回再開を要求していた」との派閥関係者による特捜部の事情聴取での供述である。しかし、このことは検察の供述調書には触れられていない。検察への疑惑を惹起する内容でもある。
   
   
・(3)政治資金規正法改正をめぐって
   
このことについて、立憲、維新、国民、共産、有志の会の4党1会派が

  1. 企業・団体献金の禁止
  2. 政策活動費の廃止
  3. 政治家への連座制

の3点で一致し、自民党にせまっていたが、自民党は聞き入れなかった。ところが5月31日午前、岸田首相は公明山口代表、維新馬場代表と個別に会談し、それぞれの要求を受け入れ改正案を再修正した。主な内容は、

  1. 政治資金パーティー券購入者名の公開基準を「5万超」に引き下げ、施行日は2027年1月
  2. 政策活動費の支出について、「項目別の金額」と「年月」を公開。「年間上限額の定め」と「10年後の領収書公開」を検討
  3. 政策活動費を監査する第三者機関の設置を検討
  4. 岸田首相と馬場代表との合意文書に、「旧文通費」の使途公開と残金返納を別途法整備すること

を掲げた。
   
これに対し、山口代表は「首相が英断を示した」と評価。馬場代表は、4党1会派の主張を翻し、「わが党の考えが100%通った」と賛意を明言した。自民党内では、「岸田首相の派閥解散表明」「首相みずから衆院政倫審への出席」に次ぐトップダウンの決定に、麻生副総裁や茂木幹事長は不快感を露わにしているとのこと。9月の総裁選にどう影響するか、党内不協和音の一因となることは間違いない。それはともかく、再修正案は6月6日、自民・公明・維新が賛成、衆院で可決した。再修正案の問題点は多々あるが代表的なものとしては、

  1. 公開基準を「5万超」に引き下げても、企業・団体献金は残る
  2. 10年後に領収書を公開しても、政治資金規正法の時効は5年なので、罪を問えない
  3. 領収書の公開は、プライバシー保護を理由に支出先が黒塗りされる懸念
  4. 「検討」事項が多く、先送りや実施されない可能性が大

である。

再修正案について、6月に入っての世論調査JNN・NHK・時事通信・ANNでは、
「評価しない」はそれぞれ70%、60%、72%、59%。
「評価する」は同じく28%、33%、18%、22%

といずれも評価されていない。6月23日国会閉会までに参院でどこまで再々修正されるかが焦点になるが、根本的な課題が解決されるとは思えない。
   
18日夜原稿執筆中、「維新が参院特別委で反対にまわった」とのニュースが飛び込んできた。まさに「ゆ党」だ。
   
   

■4. 政権交代の展望

解散総選挙の時期を断定することはできないが、9月末自民党総裁選後の可能性が高いと言われている。総裁選でメディアジャックを行い、疑似政権交代を演出するとともに、自民党員の求心力を高めて低迷する支持率の回復をはかり総選挙に臨むというシナリオだ。
   
しかし、各種選挙や世論調査の結果は、「自公政権の継続」ではなく「野党による政権交代」への期待が高まっていることを示している。その第一の原因は、自民党が裏金疑惑の真相解明に消極的であることだ。「自民党への不信ここに極まれり」である。さらに掘り下げると、自民党の政策にも不満・不安が高まっている。

  1. 物価高、実質賃金低下などの経済対策
  2. 社会保障とりわけ子ども・子育てなど少子化対策の不十分さ

である。この情勢に、野党がどう政権交代をなし遂げるのか。
   
あらためて政権交代への課題は何か。まず求められているのは、野党第一党・立憲民主党のリーダーシップである。野党共闘が強化されることによって「期待できる野党」と評価も高まり、「もう1つの選択肢」に成り得るのである。そのための1つは、総選挙にむけた主要政策である。筆者は2月巻頭言で「立憲の理念である『支え合う社会』(公助の充実)と自民党の『自己責任社会』(自助の押しつけ)とは対立軸にある」と分析した。公助(政府の支援)の重要性は、コロナ禍、能登半島地震、円安・物価高対策などで証明済みだ。この理念に基づいた主要政策を掲げ、他の野党との合意に努力することだ。2つは候補者調整の努力だ。自民党への不信が高くても、野党がバラバラでは自民党を利するだけだ。3つは、そのためにも個々の野党勢力が一本化への努力がなされなければならない。とりわけ連合にはそのことが求められている。また、地方における共闘づくりの努力も必要である。地方にはその経験があるはずだ。4つに、大衆運動との結合である。これだけ生活や平和、政治の信頼が脅かされている今日、野党・労働者・市民が社会に訴えるもう1つの方法は大衆運動である。
   
今ほど自民党によって国民が失った30年を政治で取り戻すチャンスはない。野党・労働者・市民が力を合わせ、政権交代を実現しよう。
   
(6月18日)
   
   

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