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●2024年3月号
■ マスコミよ ジャーナリズムたれ
    伊藤 修

■ 理不尽が放置されすぎ

徹底的に掘り下げてすぐ直すべき大事な問題が放置されたまま、という件が、最近あまりに多い。以下でとりあげるが、たとえば入管施設で死亡させられたスリランカのウィシュマさんのことは、その後どうなったか? すぐ改善に動くのが当然ではないのか? 袴田さんの再審の件、再審制度の改善はどうなっているのか? これらは、イデオロギーがどうのと関わりなく、人道、人権の問題として、対応必須ではないのか。こういう問題が山積みなので、ここでとりあげるべきだと思った。
   
特に焦点を当てたいのはマスコミの姿勢だ。ジャーナリズムは、民主主義に不可欠の存在であり、時間も手段も十分に持たない国民の目、耳、口の代理をつとめるべきものだ、と政治学の教科書にある。だが現状はどうか。
   
以下とりあげる問題も、報道はされた。しかし、一時的に興味を引き、視聴率や部数をふやす――つまりマスコミ自身の利益を追う――のを優先する報道のしかたで、のどもと過ぎそうと思えば「撃ち方やめ」で、パッと忘れてしまい、問題の追究をしない。その結果、食い散らかしっ放しで、喫緊重要問題が放置されている。これは現状維持を利益とする人々に都合がいいことだろう。
   
これら放置された問題について、私見を述べる。どう考えられるか、国民のみなさんの賛否を問いたい。
   
   

■ 自民党議員の裏金とマスコミ

最初は、いま問題の自民党議員の裏金問題である。
   
報道当初から変だなと思った。マスコミいっせいに、話を“派閥の問題”にもっていこうとしたからだ。問題は金の不正である。このさい派閥は何の関係もない。話の視野を大きくするのが正しい場合もあるが、この場合は誤り。論点の拡散は不可だ。
   
案の定、「人が集まれば派閥はできる」とか「派閥にも役割がある」とか、結論の出ない泥沼に引き込む議論を展開した。こういうのを「ミエミエ」という。「官邸の指示」か、マスコミの「申し合わせ」か、はたまた「忖度」か。
   
隠して金をふところに入れ、使い道も隠したまま。政治資金規正の違反、そして脱税、犯罪なのだ。庶民には絶対許されないことである。
   
また、コソコソ汚い不正議員には、「安倍の傘」のもと「国士」気取りで居丈高に右翼論陣を張ってきた諸君が勢ぞろいだ。あの彼も、あの彼女もいる。この諸君の正体がよくわかったではないか。逃げ隠れは潔くない。謝罪し、責任をとり、罰を受けるべし。そして連中を一掃すべし。
   
納税者、有権者諸君、そうではないか?
   
   

■ 入管制度

冒頭でふれたが、ウィシュマさんが入管施設で重病なのに放置され、殺された。「技能実習制度」も含めて、日本の外国人に対する奴隷的な扱いは、人道に反するとして海外の批判も強い。
   
この時代に「攘夷」「異人排斥」か。そう教育されるのか、あるいは戦前のやり方を漫然と続けているのか。どちらにしても未開・野蛮、日本の恥である。自分とちがうものを理解し受け容れることは、理性・知性、文明度のバロメーターだ。制度を即刻変えるべきである。
   
みなさん、ちがうだろうか?
   
   

■ 再審制度

警察、検察、司法のあり方は、日本人に対しても未開・野蛮、人道に反している。再審制度もそうである。
   
昨年、袴田さんの再審について報道されたが、すぐやめてしまった。心あるマスコミは、制度の問題点と改革の方向にもふれていた。あまりに時間がかかり、まるで冤(えん)罪の犠牲者が死ぬのを待っているかのようであること、諸外国で冤罪救済の制度改革が進んでいることなどである。再審を速やかに進めるには、弁護側に新証拠を出す責任を全部押し付けるのでなく、検察がもっている証拠をすべて出させること、再審開始に対する検察の不服・抗告による引き延ばしをやめることだと。
   
すぐ実現し、犠牲者を救うべきではないか。警察・検察のメンツを守るとか、組織内で評価されて出世するために人権を侵すのはすぐやめさせよう。
   
みなさん、そうではないか?
   
   

■ 万博・カジノ まだやるか

東京五輪もひどかったが、懲りもせずに大阪万博の予算が膨らんでおり、工事も遅れているようだ。ほかに金をかけるべきことがあるのに、まだやるつもりか? 大阪はカジノも強行するらしい。
   
維新は「身を切る改革」が売り物だったはずだ。その売り文句に反するブラックな姿をさらけ出すものではないか。第一に、この財政事情なのに無駄使いそのものである。第二に、あとからどんどん額が膨らんでくる。詐欺ではないか。第三に、全国の国民の金を自分のところへ持ってくる利権政治ではないか。
   
即刻やめることを求める。マスコミもチヤホヤするだけでなく公正に問題点も指摘せよ。
   
有権者諸君、ちがうだろうか?
   
   

■ インフレ下 年金引き上げを

年3%の物価上昇が続いている。必需品である食料に至っては7〜10%上昇だ。収入の目減りに対しては賃上げが最重要だが、年金生活者も苦しい。引き上げよ。
   
年金はいま「マクロ経済スライド」という制度をとっている。物価と賃金の上がり具合に加えて、寿命と現役人口の変化も勘案する。寿命が延びれば受給者がふえ、現役が減れば負担が重くなる。分かち合おうという基本発想は間違っていないだろう。
   
しかし運用はどうか。23年度の引上げは、67歳まで2.2%、68歳以上1.9%、今年4月からは2.7%だ。物価上昇3%以下であり、はっきり目減りになる。ずっと物価が上がらずにきたあと突然インフレに見舞われている。緊急救済でもいいから、今年の運用は物価をカバーする引き上げをすべきだと考える。
   
年金生活者諸君(筆者も一員だが)、これを大声で訴えるかどうかで、庶民の味方か敵か判断しようではないか。
   
   

■ 下請けいじめ

インフレで原価が上がっているのに下請けの値上げを認めない悪質親会社が多い。この下請けいじめは独占禁止上の「優越的地位の利用」「不公正取引」であり、中小の賃上げの障害でもあるとして、行政としても苦情受付や企業名公表を行っている。悪質だとして公表された企業には、日本郵政、佐川急便、トヨタグループ各社などがある。
   
しかし日本の行政はまだ弱いと専門家はいう。納入価格が固定しているケースは疑わしいとみて調査に入るとか、CM費が無駄になるくらいダメージを受けて売上げが減るようにペナルティをきつくする、などが挙げられる。
   
即刻、厳しく実施して、中小の賃上げを後押しすべきである。大企業は過去最高の利益を更新しているのだ。
   
みなさん、そうではないのか?
   
   

■ 最賃が生活保護と同額?

昨年10月、新しい都道府県別最低賃金が適用になった。地方部では時給893円を最低に890円台が並ぶ。あまりに集中しているので不思議に思い、電卓を叩いてみて気がついた。同じ10月から新しい生活保護額も適用になったが、その基礎となる「最低生活費」が地方部では13万4000円、12倍すると年額160万8000円。それを標準年労働時間の1800時間で割ると、ちょうど893円になるのである。
   
実はかなり前から、日本の「逆転現象」が国際的な社会保障研究で話題になっていた。世界では最低賃金が生活保護より高いのが普通だ。働いているのだから当然だろう。しかし日本では逆になっていた。こういうことを指摘されるのは恥だ。さすがにこれはおかしいと国会でもとりあげられた。おそらくこれに対処するために、最賃を生活保護と同じかわずかに高く設定したと推測する。
   
1800時間働いて「最低生活費」にしかならないというのはひどくないか。人権・人道問題ではないか。もちろん、では生活保護を下げるというのは本末転倒である。
   
「最低生活費」をもっと重要視しよう。そして最低賃金をもっと上げよう。そうでないと憲法二五条に違反する。払えないというなら、人を雇う資格はないのである。
   
みなさん、ちがうだろうか?
   
   

■「年収の壁」

国際的に恥ずかしいといえば、「年収の壁」問題もある。先進諸国が加盟する経済分野の国際機関OECD(経済協力開発機構)は1月、「対日経済審査報告」を発表した。その中で“日本は労働力不足なのであれば、女性の労働を制限している「非正規問題」や「年収の壁問題」を解消したらどうか”と勧告されたのである。
   
周知のように、96万円から150万円まで、年収がそれを超えると扶養控除などで不利になるという「壁」がいくつかあり、年収をそれ以下に「調整する」ことが広くみられる。そこで人手不足対策で時給を上げたら労働時間を減らす人が多く、かえってもっと人手が足りなくなるといった不合理な事態が起きているわけだ。
   
こんなことはおかしい、扶養控除などの「壁」要因の制度をやめようという点で、まともな経済学者のほとんどの意見が一致している。それなのにやめないのは、「世帯主が稼ぐ」「内助の功に応える」といった時代錯誤の「家制度」右翼が足を引っ張っているから。そして彼らは「裏金」不正に名を連ねる安倍残党が中心なのだ。まさに汚れたおジャマ虫ではないか。
   
すぐ制度を改正しよう。あたりまえのことだ。海外から指摘されるとは情けない。恥ずかしい。
   
みなさん、そうではないか?
   
   

■「1億円の壁」

「壁」といえば「1億円の壁」問題もある。
   
ご存じのとおり、ふつう所得税は、所得が多いほど負担率が高まる仕組みをとっている。ところがわが日本では、年収1億円を超えると税負担がかえって軽くなっているのだ。これは財務省がホームページでも公示している。
   
その理由は、こういう大金持ちは、われわれ庶民と違って、所得の大部分が株などの金融所得であり、金融所得は所得税の別建てで、税率約20%と低いからである。どうみても理不尽だ。
   
さすがに岸田首相も当初、「新しい資本主義」の一環でこの理不尽をやめようと言ったが、反発が出るや、すぐに引っ込め、忘れてしまったようだ。これではだめだ。
   
だれがみてもおかしいこんな税制は即刻やめよう。みなさん、ちがうだろうか?
   
   

■ 核禁止条約

核禁止条約ができ、批准国は70カ国を超えた。日本は反対票を投じ、今も参加していない。本来なら、被爆国である日本は率先して推進すべきなのに、である。おかしくないか。
   
『外交青書』によれば、日本政府の立場は、「核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険に晒(さら)す」からだとのこと。広島・長崎を経験しながら、核兵器の「威力」の「効用」を重視するというのか? 本気で考えて言っているのか?
   
また、条約に反対する核保有国を“追いやらず”に「橋渡し」役として説得にあたる、との言い訳もしている。そんな屁理屈が通用すると思っているのか? 核廃絶の説得は、その国際的な輪の中に入って積極的にすべきだろう。
   
安倍政権時のこんな“日本政府の立場”はまったく認められない。みなさん、そうではないか?
   
   

■ 攻撃が安全保障か

安全保障のため「敵基地攻撃能力」を抜本強化する、というのが自公政府の方針である。
   
2021年に『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』という本(新潮新書)が出た。そこで現在の方針の考え方が全面展開されている。力説しているのは、安全を守るには、「敵」が日本攻撃を思いとどまるような実力、すなわち「抑止力」が不可欠だということである。それには、「敵基地攻撃能力」のほかに、「敵」首脳を殺す、「敵」主要都市を打撃する(当然、ウクライナやガザのような罪なき市民を巻き込む惨劇を生む)なども含まれる。
   
さすがに政府としては、こういう本音をあからさまに言うのはまずいかと判断して、「敵基地攻撃能力」という限定的な言葉を前面に出したのだろう。しかし「軍部」の本音は右のようだ。
   
「反撃」だと言ったところで、結局は相手国への「攻撃」であることに変わりはない。日本がそうなら、相手国も公然と対抗するのは当然である。攻撃力増強競争になるのは必至だ。こうやって戦争に近づいていくのは、嫌というほど経験済みではないか。そしてその結果の惨事も嫌というほど経験済みではないか。どこが「安全保障」か?
   
この完全に間違った考えに異を唱え、葬り去ろう。みなさん、ちがうだろうか?
   
   

■ 豪・米の憲法をみよ

憲法「改正」(われわれからすると「改悪」)の動きが急である。改憲派はよく「不磨の大典」扱いという言葉を使う。“何十年も変えないのはおかしい”と言いたいらしい。
   
ところが、筆者は2年前に退職してから、これまで勉強してこなかった法律や政治を少しずつ勉強し始めたところ、無知だったため驚くことがあった。
   
たとえばオーストラリア憲法(1900年制定、01年施行)では、今でも元首はイギリス国王であり(つまり立憲君主制)、その代理がイギリスの「オーストラリア総督」なのである。名実共に独立して共和制に移行すべきと主張する共和派もいるとのことだが、何度か実施された国民投票でいずれも僅差否決されているという。もちろん、現状に合わないところは運用で対応していて、深刻な問題はない。
アメリカ憲法も、1787年成立、89年施行のままで、改正はしておらず、新しい部分は「修正条項」(現在二七カ条)で対応しているとのこと。
   
驚いた。みなさんはいかがだろう。では、改憲派の諸君が言っていることはいったい何なのか。改憲は必要なし。
   
みなさん、そうではないか?
   


もうメチャクチャではなかろうか。こんな愚かな現状は速やかに変えよう。足を引っ張る連中は速やかに退場させよう。そしてまずわがマスコミには、重要問題にかじりつき、深掘りして、国民の目・耳・口の代理、助けをするというジャーナリズム本来の役割を果たしてもらいたい。
   
   

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