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●2018年4月号
■ 九条改憲発議阻止に全力を挙げよう
     社会民主党党首 又市征治

   

■ 第16回社民党大会を終えて

去る2月24日〜25日の社民党第16回党大会で、不肖私が党首に就任致しました。読者の皆様にはこれまで以上のご支援、ご協力を心からお願い申し上げます。
   
さて、党大会は、政党要件の1つである比例区の得票率が2%を割り込んだ、存続の危機をいかに克服・打開するかが最大の課題でした。大会では29名の代議員から地方の具体的な闘いの報告や意見を頂き、向こう2年間、

  1. アベノミクスによって広がった格差・貧困の是正、
  2. 消費税10%の中止、不公平税制の是正で社会保障の拡充、
  3. 早期の脱原発・エネルギー政策の転換、
  4. 九条改憲による軍事大国化阻止

などを最重点の政治課題として掲げ、労働組合や様々な市民運動と連携して全国で運動を展開し、来年の統一自治体選挙と参議院選挙で議席増と党勢拡大、再建・再生を図る方針を確認しました。
   
つまり、安倍政権と財界が一体で進める新自由主義・新保守主義の諸施策が勤労国民に様々な犠牲をもたらしている事実と、それに対する党の政策を明確に訴えて支持を広げると共に、職場・地域でその実現を目指す運動を作り出すことを全党で意思統一し、実践することです。
   
確かに党の高齢化や行動力の低下などの現状がありますが、私は決して悲観はしていません。平和憲法施行70年、「九条改憲で戦争ができる国づくりを許すかの否か」が、今まさに国民1人ひとりに突きつけられています。社会党・社民党は戦後一貫してこの改憲策動と闘い続け、年配の党員ほどその誇り・自負心をお持ちです。だから私は、ピンチをチャンスに変える時でもあると強く訴えました。
   
これに真正面から応えて頂いた報告がありました。それは、北九州八幡西区の70代の代議員の、16年ぶりに市議を作り出した報告でした。機関会議の定例化と意思統一によって、全党員カンパに始まり、街頭行動など党の見える化、社会新報号外の配布、全戸ローラーなどによって勝ち取ったとのこと。そして、「年を取ったから出来ない、ではなく、年を取っても出来る」と報告されました。
   
私は、憲法の危機を迎えた中で、今一度この北九州の報告を全体で共有化する必要があると強調しました。そして、新しい体制になりましたので、「行動する執行部」「動く執行部」を目指そうと強調しています。少ない国会議員ですが全国に「行ける日を指定」し、全国47都道府県にこちらから出かけて行き時局講演会を開催する、街頭宣伝をするなどの取り組みから社民党の可視化をしていこうと申し上げています。
   
こうした行動を展開することで、私は年配党員をはじめ一般党員・支持者・支持労組の皆さんに、「今こそ出番ですよ」と奮起を訴え続け、党活動の活性化、再建につなげたいと考えています。無論、中央においても「憲法連続講座」、労組との懇談会などを開催し、アッピールをすると同時に、先ほど申し上げた全国各地での取り組みと連動させて追求することを確認しました。
   
そして、具体的には、「九条改憲NO! 3000万人署名」を主体的に捉え、党機関として継続的な街頭宣伝・チラシ配布を行う。地方議員は自らの選挙の前哨戦として後援者と共に当選確実得票数を超える署名を、無論一般党員も職場・地域で最大限の署名獲得に奮闘し、来年の統一自治体選挙での議席増と参議院選比例代表で240万票を獲得し2議席確保に繋げようと確認をしました。
   

■ 通常国会前半――6野党共闘構築なる

次に、通常国会前半の攻防から申し上げます。18年度予算案の審議が参院に移っています。特徴は、社会保障費の圧縮の一方で防衛費は6年連続での増で、17年度補正分を含め過去最高の5.4兆円にも上ります。審議の焦点はアベノミクスの問題点、モリ・カケ疑惑の証人喚問、安倍首相が、「今国会は働き方改革国会」と述べたように「働き方改革」と改憲問題などです。
   
率直に言って当初は、民進党の4分裂によって野党が分散化して、政府追及も今ひとつ迫力がありませんでした。わが党は繰り返し幹事長・書記局長会談を呼び掛けて、2月21日に裁量労働制の異常データ問題で6野党会談が実現し、そしてわが党の大会へ4野党党首(立憲民主党、民進党、共産党、自由党)に出席頂きました。そこで、「働き方改革」関連法案や安倍九条改憲阻止、来年の参議院選挙で32の1人区の候補一本化などに向け共闘を強化することが確認され、一緒に団結ガンバローを三唱頂きました。2年前の参議院選挙の野党共闘もわが党の大会での勢揃いから進展したように、わが党が野党共闘の接着剤の役割を果たしています。なお、3月1日の各党挨拶回りで希望の党にも共闘を呼びかけ、賛同頂きました。
   
「働き方改革」関連法案、その内容については本誌読者の皆さんはご承知のことですので省きますが、国会での攻防は裁量労働制拡大や残業代ゼロ制度創設などを議論する労働政策審議会に「議論の出発点にしてほしい」と不適切・異常なデータが提出されていたことが判明し、6野党(5野党プラス希望の党)そろっての追及の結果、関連法案から「裁量労働制拡大の全面削除」を安倍首相が指示する事態になりました。
   
目玉法案の柱が国会提出以前に崩れるなどというのは前代未聞のことです。本来なら、高度プロフェッショナル制度も法案から外し、労政審に差し戻すべきですが、それには応じていません。この法案は残業代ゼロ、過労死合法化法案と言っても過言ではありません。引き続き廃案に向けて6野党で追及するつもりです。
   
裁量労働制を巡っては、本来対象にならない業種に適用したり、残業代が固定になることを悪用して長時間労働を強いたりするもので連合も反対しています。私は、憲法二五条の「国民は健康で文化的な生活を営む権利を有す」という観点に立って、職場段階からしっかりと点検をし、タダ働き含めた改善の闘いに全力を挙げるべきではないかと皆さんに強く申し上げています。
   
いずれにしましても、高度プロフェッショナル制度をはじめとした「働き方改革」関連法案の廃案に向けて、院外の労働3団体を中心とした大衆運動を強化すること、それと連動して院内の6野党共闘との連携を図り、廃案に追い込む闘いを強化したいと思います。
   
次に、「安倍政権の総辞職に値する」公文書改ざん問題です。安倍政権の下で公文書管理のずさんさ・情報隠蔽、国会軽視が続発しています。「権力は腐敗する」、その典型だといえます。具体的には、

  1. 森友学園問題で、国有地売却関連文書は、当初「廃棄」したと言い、後に5000頁分も提出した。
  2. 加計学園問題で、政治家の関与を伺わせるメモを当初は「怪文書」、後に文科省作成認める。
  3. 南スーダンPKOの日報を、当初は「廃棄」と言ったが、後に実在を認める。
  4. 裁量労働制の調査原票を、当初「なくなった」と言い、実は厚労省倉庫に32箱存在した

――などです。
   
特に、今般明らかになった森友学園への国有地売却等に関する公文書改ざん事件は、単なる土地の安売り疑惑の域を超えて、その国会答弁と共に、行政府が国権の最高機関たる立法府と主権者国民をこの1年余り騙し続けてきた、民主主義を根底から揺るがす重大事件で、憲法六二条に基づく国政調査権を妨害し、公文書管理法や情報公開法、刑法などに違反する前代未聞の事件です。それを隠そうと、この間、隠蔽と言い逃れに汲々としてきました。なぜか。それは安倍首相夫妻の関与を隠すためと考える他ありません。一体「誰が、何のために、誰の指示で決裁文書を書き換えたのか」の真相解明には佐川前理財局長や安倍昭恵氏などの証人喚問は欠かせません。いまや安倍内閣と行政に対する国民の信頼は修復できないほど地に落ちました。
   
因みに、3月17〜18日の各紙の世論調査では「安倍内閣の支持率」は朝日新聞が支持31%・不支持48%、毎日新聞が支持33%・不支持47%、共同通信が支持38.7%・不支持48.2%と大きく逆転し、公文書改ざんについて「安倍首相に責任あり」は朝日新聞が82%、毎日新聞が68%、共同通信が66.1%にも上ります。
   
国民主権の理念に則った行政を取り戻すためには、安倍内閣が即刻総辞職することです。徹底した追及を院内外から行い、連日国会前で広がりつつある「安倍政権打倒」のうねりを全国に広げることだと思います。
   

■ 改憲をめぐり活発化する自民党

このように、安倍政権に憲法改正を語る資格はありませんが、安倍首相が「今年は改憲の年」と述べたことを受け、自民党は改憲4項目(九条への自衛隊の明記、高等教育の無償化、緊急事態条項創設、参院選の2県合区解消)の党内合意を3月中に図り、国会に改憲案提出を目指しています。
   
安倍首相は、「九条に自衛隊を明記してもこれまでと何も変わらない」と国民騙しのペテン師ぶりの発揮に努めています。それは、14年7月に「憲法が認める『必要最低限度』の自衛権には集団的自衛権も含まれる」とする拡大解釈を閣議決定し、15年9月にはこれを基に安保法制(戦争法)を強行可決したからです。つまり3年前に自衛隊が集団的自衛権を行使できるようにしたので、「これまでと変わらない」と言うのです。
   
多くの国民は、「専守防衛に徹し、日頃は国内外の災害救援に携わる自衛隊ならば良いが、海外で戦争することには反対だ」という認識であり、ここに大きなズレがあります。「憲法への自衛隊明記」は安保法制の合憲化、すなわち九条一項二項の死文化を企図するものであり、断じて許すわけにはいきません。他の3項目は法律改正や財政措置で可能なものばかりであって、九条改憲を薄める口実です。
   
次に、国民投票に至る日程ですが、これは当然、6野党共闘の成否にも大きく左右されますが、第一は6月国会発議、9月に自民党総裁3選を果たし、10月23日の明治150周年式典の祝賀行事を経て月末(28日)の国民投票。第二は、来年の通常国会で発議し、4月末天皇退位と新天皇即位の祝賀ムードをくぐって7月の参議院選と(衆院のダブル選挙に)国民投票を抱き合わせた実施もありうると見るべきで、これを見据えた運動が必要です。
   
そのためには、党大会で確認した具体的な運動課題として、「改憲阻止3000万人署名」運動で大衆的な広がりをつくることです。地域・職場での署名運動の中で、「安倍首相は『憲法に自衛隊を明記してもこれまでと何も変わらない』と言うが、『専守防衛』と災害救援などに携わる自衛隊は多くの国民が認めており、あえて国民投票に850億円もかけて憲法九条を変える必要性も緊急性もない。それなのに自衛隊を憲法に書き込もうというのは、安保法制で“海外で戦争ができるように任務を拡大した自衛隊”を憲法に明記したいということに他ならない。九条を変えて平和国家としての歩みを180度転換する企みには絶対反対だ」という世論、国民多数派を形成して改憲発議を断念させる、もし国民投票に出てくればこれを否決する状況を作り出すことが重要です。
   
しかし、現状は国民の中にも北朝鮮への脅威論などを筆頭に様々な疑問があるわけですから、大会でも出されましたが、例えば「100問、100答」でも作り、ホームページに掲載し、安倍自民党の改憲の欺瞞性を暴露していく宣伝活動なども強化したいと考えています。
   
関連しますが、3月5日、韓国の特使団が平壌を訪問し、南北首脳会談を巡り「満足な合意」に達したとの報道があり、これを受けてトランプ大統領が、「5月までに米朝首脳会談を行う」と表明しました。その詳細は現段階では明らかではありませんが、この対話が「非核化」の第一歩となるかどうか、注目をしています。
   
実は、党内でも忘れられがちですが、社民党の「北東アジア総合安全保障機構構想」の提案も反映された2005年の「6カ国共同声明」は、朝鮮半島の緊張緩和と平和構築に向け、米朝が対話のテーブルに着き、米朝休戦協定を平和協定に変え、国交正常化を図り、関係国による経済援助と核・ミサイルの放棄を一体的に解決しょうとするものであり、先見性があったと同時に、今日的情勢下でその実現への努力が求められています。
   

■ 野党共闘を強化し、社民リベラル勢力の総結集を

裁量労働制をめぐる攻防から異常データ問題というある意味で敵失によって6野党共闘の構築へと発展し、森友問題での財務省の決裁文書偽造(公文書改ざん・虚偽答弁)問題は、「安倍政権は総辞職に値する」との世論に発展しています。2月24日のわが党の大会時点では誰しも今日の状況を予測は出来なかったと思います。
   
繰り返しになりますが、「敵失」と同時にそれを逃さず6野党が結束して院内から闘い、院外へ闘いを呼び掛け発展させたと言えます。その意味で、私たちは2015年のいわゆる戦争法案廃案の闘いの経験をもっていますが、あの時も当初は年配者、若者、ママさんたちが連日国会前に押し寄せ、抗議行動を連続して積み上げる中で、野党第一党の民主党もこの闘いに参加するようになったことはご承知のとおりです。無論、連合内産別、単産も後には参加したことは言うまでもありません。
   
ですから、やはり安倍政権の新自由主義・新保守主義政治の諸政策がもたらす国民への生活破壊、社会保障の縮減・負担増、切捨て、そして将来不安の惹起という現実をして闘いに立ち上がらざるをえない、立ち上がるという確信をもつことが重要ではないかとつくづく思います。安倍政権の数々の悪政、政治反動が国民を闘いに立ち上がらせる条件を日々作り出しているという認識をもつことです。
   
その1つの現れとして、3月9日に立憲民主党が中心となって、「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(原発ゼロ基本法案)を衆院に共同で提出しました。無論、社民党、共産党、自由党なども共同提出に加わることになりました(民進、希望の党についても検討に時間を要するとのことで、拒否されたとはなっていない)。なお、こうした野党共闘に加え、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連、会長=吉原穀・城南信用金庫顧問)の原発ゼロ法案骨子とも全面的に一致しているとして、顧問の小泉純一郎、細川護熙両元首相も含めた幅広い国民運動にしていく条件も生まれています。
   
問題は、社民党がある意味でそうした共闘運動の中にあって黒子に徹して運動を担い、市民運動の皆さん含めた信頼を勝ち取ることではないでしょうか。今日的な情勢下にあって、そうした活動の重要性についても具体的な実践を通して大会でも強調されました。
   
また、私は来年の統一自治体選挙では、例えば県議選で1人区のところは野党共闘で候補者を調整して戦い、自民党が圧倒的多数の地方から変えていく取り組みなども検討すべきではないかと思います。無論、2人区、3人区でもそうした野党共闘の追求の検討もあって良いと思います。
   
自治体議員は“社民党の顔”であり財産です。「現有議席プラス・ワン」と「空白解消」を通して参議院選挙の前進を図らねばなりません。こうした地方における野党共闘の具体的な組織化を通して、国政段階の野党共闘もさらに力強いものになってくると思います。そのことによって、国民から野党共闘への信頼も高まり、いわゆる政権交代可能な野党共闘としての存在意義が強まると思います。世論調査で圧倒的に多いと言われる、「政権交代可能な政党の存在がない」ので、「仕方なく安倍政権の支持」という現状を変えることができると思います。
   
そうした展望を持ちながらも当面は社民党の主体をどう強化するのか、再建運動に全力を挙げたいと思います。無論、それは取り巻く情勢や国民が求め、現実に進みつつある野党共闘運動を精一杯担うという課題と対立するものではありません。運動を通して私たちも成長できますし、支持も広げられるということです。そうした意味でも、「今こそ社民党の出番」ということを全党員、支持者の皆さんに訴えて、党再建に邁進したいと考えます。今まで以上の社民党へのご援助、ご協力、ご支持をお願い致します。
   
   
(社民党又市征治党首へのインタビューをまとめたものです。責任は編集部にあります。3月19日)
   
   

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