●2017年9月号
■ 第194臨時国会の焦点と課題
社会民主党企画局長 横田昌三
■ 政権浮揚へ反転攻勢
「安倍一強」と言われてきたが、報道各社の7月の世論調査では、内閣支持率が5月と比べて平均約20ポイントもの減となり、「危険水域」と言われる30%を割り込んだ社もあった。7月2日投開票の東京都議選でも、自民党は過去最低だった前々回の38議席を大幅に下回る23議席という想定外の大惨敗となった。
豊田真由子衆議院議員の暴言、萩生田官房副長官の加計問題への関与、稲田朋美防衛相の問題発言、下村元文科相の政治とカネの疑惑などだけでなく、これまでの「共謀罪」法案の強行採決などアベ政治の独善的な暴走と同時に、「モリカケ」疑惑に見られる政治の私物化への国民の不信・不満が根底にある。加えて、二階幹事長の「落とせるものなら落としてみろ」発言や、安倍首相の「こんな人たちには負けない」発言に見られる、「一強のおごり」に対する国民のしっぺ返しであり、自民党の自滅にほかならない。
安倍首相は、当初、18年の通常国会で改憲を発議し、18年9月、自民党総裁選で三選を経て歴代最長在任総理を確実にして、秋から年末にかけて衆院を解散して国民投票と衆院選を同時に行うという方向や、都議選で民進党が惨敗し、野党共闘が整わない中、「小池新党」の準備が間に合わないうちに、この秋に解散・総選挙を断行して勝利し、「モリカケ」疑惑のみそぎを図るという方向を狙っていた。
しかし、都議選の惨敗と支持率急落により、与党内からも「安倍首相では総選挙を戦えない」との声が出始め、安倍政権自体の体制の立て直しと支持率回復が喫緊の課題として迫られることになった。
まず、「共謀罪」法案の強行採決や「モリカケ」疑惑に対する強引な姿勢が国民の反発を招いたことから、安倍首相は、「深く反省しなければならない」、「身を引き締め、謙虚に丁寧に、前に進めなければならない」と語り、都議選を理由に突っぱねていた閉会中審査に応じることにした。
つぎに、7月にG20ハンブルクサミットへ出席するとともに、日本とEUの経済連携協定(EPA)の大枠合意を宣言し、9月上旬にはロシア・ウラジオストクでの東方経済フォーラム、下旬にはアメリカのニューヨークでの国連総会に出席するなど、引き続き「世界の安倍」像を演出しようとしている。
そして、7月28日に稲田防衛相を辞任させるとともに、この間の支持率低下に「貢献」した松野文科相や山本地方創生相、金田法相、鶴保沖縄・北方担当相ら問題閣僚を一掃し、イメージ・チェンジを図るべく8月3日、自民党役員人事と内閣改造を行った。
また、「働き方改革」や「人づくり革命」などのスローガンを打ち上げ、来年度予算の概算要求作業や補正予算の検討で「経済優先」の姿勢をアピールしようとしている。
さらに、改憲をめぐっても、内閣支持率の下落を踏まえ政権浮揚を最優先させるため、8月5日の民放番組で安倍首相は、「党に任せる。日程ありきではない」とトーンダウンさせ、期限にこだわらないという姿勢を示し、「最優先すべき仕事は経済再生」と明言した。
■ 問題は安倍首相自身
7月24・25日に衆参予算委員会で閉会中審査が行われ、衆参の安全保障委員会でも8月10日、南スーダンPKOの日報問題に関する閉会中審査が行われた。しかし、政府側の参考人は「記憶がない」、「記録がない」との答弁を繰り返し、首相自身、学校法人加計学園による愛媛県今治市での獣医学部新設計画をどの時点で知ったのかについて、従来の答弁を修正し、今年1月20日に初めて知ったとの不自然な説明に終始した。安保委員会でも、隠蔽の経緯に関して、特別防衛監察の結果を読み上げる場面が目立つとともに、与党が肝心の稲田元防衛相ら当事者の出席を拒否した。いずれも低姿勢ぶりを演出しながら丁寧な説明には程遠く、真相の解明は不都合だと言わんばかりの対応であり、疑惑が膨らんだ結果になった。
外交でも、TPPは漂流し、ロシアには経済協力を食い逃げされ、トランプ政権にすり寄ったものの負担増を押しつけられ、日中・日韓関係も八方ふさがりである。
人心一新と言いながら、内閣改造では、放言癖のある麻生副総理兼財務相、鉄面皮な菅官房長官、国民を見下した暴言やマスコミ批判を繰り返す二階自民党幹事長らが留任するなど、政権と自民党の骨格は変わっていない。
確かに、内閣改造で支持率が軒並み上昇に転換し、支持率の下落傾向に歯止め感がある。しかし、「共謀罪」法案強行後の「人づくり革命」や「経済再生」最優先とはいっても、柳の下の泥鰌は何匹もいないのであって、イメチェンの効果や国民の忘却が続きはしない。二階幹事長が、「(国民の批判に)耳を貸さないで頑張らなくてはいけない」などと発言しているように、反省はフリだけである。
実は、共同通信を除き依然不支持率が支持率を上回っている。しかも不支持理由では、「首相が安倍さん」が急増(朝日16%増、毎日11%増)し、「首相が信頼できない」が最高(読売54%)となるなど、支持率低下の理由で最も多いのが、安倍首相自身を信用できない、である。一連の強権政治や隠蔽体質、身内びいきや政治の私物化こそ問題であり、改造されるべきは安倍首相自身である。
■ 疑惑の解明と閣僚の資質追及
野党は、通常国会閉会直後から、早期の臨時国会召集が必要だと主張し、憲法五三条に基づき国会召集を要求していた。これに対し、政府・与党は、拒否し続けてきたが、ようやく9月末にも臨時国会を召集する調整に入った。
森友学園を巡って、7月31日、大阪地検が籠池前理事長夫妻を逮捕したが、「口封じのための見せしめ逮捕」、「国策捜査」と言われないよう、補助金不正受給問題で終息させることがあってはならない。発端となった国有財産の約8億円もの不当な値引きによる払い下げと学校認可という森友学園問題の「本丸」に斬り込み、近畿財務局などへの家宅捜索も含め、司直として徹底的に捜査すべきである。司直の手に委ねられたからといって、国会としての疑惑解明の責任が免れるわけではない。政治や行政の私物化に対する不信を払拭するため、国会としても一連の経緯を検証し、疑惑を解明するべく、安倍昭恵氏及び佐川国税庁長官ら関係した職員の証人喚問を強く求めていかなければならない。
加計学園による獣医学部新設問題についても、疑惑の本丸は首相官邸である。説明責任を果たさず権力を私物化し、権力者による友人への特別な利益供与という構図は、パク・クネ前韓国大統領と全く同じといわざるを得ない。ここにきて、「1月20日に初めて知った」と従来の答弁を修正したり、加計隠しで議事要旨を改ざんしたり、建設費用の水増しが明らかになったりするなど、新たな状況が生まれている。引き続き加計理事長らの国会招致を含め、真相解明の努力が求められる。
日報問題についても、今回の特別防衛監察によって、十分に解明されたとは到底いえない。閉会中審査前に追及逃れのためか稲田氏は辞任したが、防衛省・自衛隊の体質、文民統制のあり方、国民の知る権利に関わる重大問題であり、辞任した稲田氏をはじめ、黒江防衛事務次官、岡部陸自幕僚長、湯浅陸幕副長ら関係者を証人喚問するなど、国会として徹底した全容解明と責任追及を続けていく必要がある。
改造で「仕事人内閣」と銘打ちながら、発足からわずか2日で、江崎鉄麿沖縄・北方担当相から、「しっかりお役所の原稿を読ませていただく。立ち往生より、ちゃんと答弁書を朗読かな」、「(北方領土問題について)素人は素人。皆さんのいろんな知恵で色を付けてもらうことが一番大切」といった失言が飛び出した。沖縄問題や北方領土問題は、安倍政権にとっても重要課題であるはずであり、「素人」を任命した安倍首相の責任も問われる。臨時国会では、新閣僚の資質を徹底的に追及する。
■ 生産性向上のための「働き方改革」
残業時間の上限規制や「同一労働同一賃金」の導入などを盛り込んだ「働き方改革実行計画」に基づき、臨時国会に「働き方改革」関連法案が提出される。政府をあげて「働き方改革」を推進するため、現在の雇用政策の基本方針を盛った雇用対策法を衣替えし、「労働政策総合推進法」などの名称で新たな基本法とすることも検討されている。
また、継続審議となっている、専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」や裁量労働制の拡大を盛り込んだ労働基準法改正案は、一旦取り下げ、連合から提案された修正内容も含め、残業時間に罰則付きの上限規制を設ける労働基準法改正案と一本化する形で、再提出の上、成立を目指す方向である。
「働き方改革」は、一見すると労働者の労働条件や労働環境の改善の面もないわけではないが、その背景には、人口減少による労働力不足があり、財界は搾取する対象である労働力の確保と生産性の向上を狙っている。脱時間給制度や裁量労働制の拡大も、勤怠管理型から成果重視型、時間賃金から出来高賃金への転換の一環であり、「非正規をなくす」というのも、「労働時間ばかり長くて成果を出さない」正社員自体をもっと見直していくということでもある。
5月24日、安倍首相は、人手不足を乗り越えるためには、労働生産性の向上しかないとして、「生産性向上国民運動推進協議会」を立ち上げ、「働き方改革」とともに、生産性向上と「人づくり革命」を最重点課題に据える考えを示した。そして、6月24日の講演で、「不合理な待遇差を是正することで、人のやる気につなげていく。同一労働同一賃金を実現します」、「非正規のときには無かった責任感が、正規になって生まれてくる。これはまさに経営側にとっても生産性が上がっていく。売り上げが増えていく、利益が増えていく、成長していく、必ずプラスになるはずである」など、非正規労働者は、責任感がなく、やる気がないといわんばかりの暴言を吐いた。安倍首相自身が、非正規労働者の現場を理解していないし、安倍政権の進める「働き方改革」が、生産性の向上や企業の成長、利益拡大のためのものであることが明らかになった。
生産性の向上を追い求め、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する残業にお墨付きを与える、世界で一番企業が活動しやすい国のための「働き方改革」や、国家と経済効率を最優先して個人の尊厳など一顧だにしない「人づくり革命」ではなく、私たちは、働く者の尊厳と家族的責任の観点から対峙していかなければならない。
■ その他の重要課題
継続審議の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正案は、精神障がい者に対する差別や社会的偏見を助長しかねないだけでなく、医療や福祉に犯罪の予防という保安的側面を背負わせるものである。DPIはじめ障がい者団体や日弁連なども反対や慎重姿勢であり、退院後の患者本人の生活を支援するための地域医療・福祉の充実と権利擁護制度の創設の方向で抜本的に見直すべきである。
市町村などが手掛ける水道事業の統合・広域化を促進するため水道法改正案には、民間の資金とノウハウを最大限活用する公共施設等運営権(コンセッション)方式の採用を促す規定が盛り込まれている。放漫経営や災害時のリスク、撤退リスク、倒産リスクなどのデメリットに加え、水道を外資に譲り渡す危険性や、現場の労働者の雇用や労働条件、身分の懸念などもあり、慎重に議論すべきである。
政府は、全国的な民泊の解禁を目指してきたが、通常国会で民泊新法(宿泊事業法案)は成立したものの、違法民泊の無許可営業者に対する都道府県知事などによる報告聴取や立入検査などの実施のほか、ヤミ民泊に対する罰金の上限額の引き上げなどを盛り込んだ旅館業法は継続となっており、フロントを撤廃するなど、旅館業の規制を緩和する旅館業法施行令の改正とともに行方が注目されている。
新規には、7月31日に政府の有識者で構成する特定複合観光施設区域整備推進会議がまとめた報告書に基づき、カジノを中心とするIRの制度設計のための実施法案が提出される。しかし、「世界最高水準の規制」というが、対策の実効性は未知数であり、プロセスには不透明な点も多い。ギャンブル依存症になった人や家族への支援策も示されていない。治安や青少年への影響に対する懸念、刑法が禁止する賭博を経済成長や地方振興に利用することへの疑問も置き去りにされ、国民の理解も広がっていない。カジノ解禁の是非も含め、根本から議論をやり直すべきである。
選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が15年6月に成立していたが、「共謀罪」法案優先で見送られていた民法の成人年齢を18歳に引き下げる改正案についても、臨時国会に法案を提出する予定である。女性の婚姻年齢の下限を現行の16歳から、男性と同じ18歳に引き上げる規定も盛り込む。なお、公営の競技については、関連法で引き続き禁止する年齢を「20歳未満」と明記する。
基本給・一時金とも4年連続の引き上げとなった人事院勧告に基づく給与法の改正について、先送りすることなく、勧告通りの早期実施を強く求める。
「経済最優先」ということで、来年度予算概算要求作業を進め、国民受けする経済政策を宣伝しようとしており、経済対策や日欧EPA対策、九州北部豪雨等の災害対策などの補正予算編成が見込まれている。すでに二階自民党幹事長は10兆円規模の補正予算を打ち上げているが、規模ありきではなく、補正に求められる緊要性の観点から、本当に国民生活のために必要なのかどうか、しっかりした精査をすべきである。
受動喫煙対策を強化した健康増進法改正案について、自民党反対派との間で調整がつかなかったため、法案提出が見送りになってきた。厚労省は、例外で喫煙を認める飲食店の広さについて法案には盛り込まず、法の公布から2年以内に政令で規定することで対立点を先送りし、法整備にこぎ着けようとしている。
その他、北朝鮮情勢と安倍政権の姿勢や防衛予算の大幅増要求、オスプレイ問題などもただす必要がある。
■「2020改憲」の阻止を
安倍首相は、5月1日、「新憲法制定議員同盟」大会に出席し、「いよいよ機は熟してきた」として、「新しい憲法を作っていくこと……を、自民党総裁としてお誓い申し上げる」と宣言した。続いて憲法施行70周年の憲法記念日に開かれた改憲派の集会にビデオ・メッセージを寄せ、「九条一項、二項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」ことや、「憲法において、国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマ」であるなどと提起し、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と言明した。
安倍発言は、公明党の「加憲」や教育無償化を憲法改正の柱とする日本維新の会の取り込みを狙ったものであり、憲法審査会における野党との合意点づくり路線から、改憲派連合路線への転換とも言える。同時に、憲法問題で党内が揺れる民進党への揺さぶりとともに、朝鮮情勢の緊張に便乗しつつ、森友・加計疑惑の払拭も狙ったものである。
その後、6月24日の講演で安倍首相は、秋の臨時国会が終わる前に自民党憲法改正原案を提出し、来年の通常国会で衆参の3分の2以上の賛同を得て憲法改正の発議を目指すとまで踏んだ。自民党憲法改正推進本部も体制を強化し、9月に「たたき台」を作成し、公明党などとの協議を経て11月上旬に改憲案をまとめるとしており、具体的な改憲項目として、
- 九条に自衛隊の根拠規定を追加、
- 幼児教育から高等教育までの無償化、
- 大規模災害時に国会議員の任期を延長する緊急事態条項の創設、
- 参議院選挙区の「合区」解消
の四点を柱とした論議に入った。
安倍首相は、新たに九条に三項を加えて自衛隊を位置づける、としている。しかし、そもそも多くの学者が違憲と指摘している集団的自衛権の行使を認める「戦争法」こそ廃止すべきである。違憲だから憲法の方を変えてしまえば合憲となるという発想は、きわめて乱暴かつ危険である。しかも、学説上の違憲論の多くは、戦力不保持と交戦権否認を規定した二項との関係であり、二項を残すのなら、違憲論の根拠が残ることになる。むしろ新たな条項と二項が矛盾することになり、九条の規範性を無力化することにつながる。また、首相の言う自衛隊の明記は、災害救助や非軍事の国際協力が国民から受け入れられている自衛隊の存在を単に規定するものではなく、安倍政権が強行した違憲の「戦争法」に基づく集団的自衛権行使とセットであり、アメリカとともに海外で戦争できる自衛隊である。まさに、九条を死文化させ、平和主義を空洞化し、立憲主義を放棄させる狙いがある。そもそも自民党改憲草案の国防軍との関係は整理されていないし、万が一国民投票で否決された場合、自衛隊の違憲性が確定することになる。
高等教育の無償化のための改憲についても、そもそも3年連続で教育予算を削ってきたのは安倍政権であり、かつての社民党も参画した連立政権下での高校無償化に対し、「バラマキ」と批判したのは自民党である。憲法の条文が高等教育の無償化の桎梏とはなってはおらず、憲法二六条を活かし、きちんと財源を手当すればよい。高等教育の無償化条項が設けられても、政府によってプログラム規定と解されるのでは意味がない。日本はすでに中・高等教育への「無償教育の漸進的導入」を定めた国連人権規約A規約(一三条二項b、c)の留保を外しており、条約の誠実義務を定めた憲法九八条二項からも実現を目指せばよい。
緊急事態における国会議員の任期の特例等についても、安易な任期延長は、国民の主権の行使を剥奪するものであり、国民の判断の機会を奪ったまま、政府に対応を白紙委任することにつながってしまう。緊急事態に対しては、憲法五四条二項の参議院の緊急集会、七三条六号の法律による政令への罰則委任の活用、公職選挙法五七条の繰延投票で対処可能である。
参議院選挙区の「合区」の解消も、2年前に無理矢理「合区」の導入を押し切ったのは自民党である。憲法四七条は「選挙区に関しては法律でこれを定める」としており、公職選挙法の改正で対応は可能である。
公明党は九条の「加憲」に消極的であり、自民党内も教育の無償化には憲法改正は不要であるとの意見が大勢である。安倍首相も、スケジュールありきではないとしている。しかし、改憲は安倍首相自身の悲願であり、首相を支持するウルトラ保守層の強い要求である。改憲の断念を明確にしたわけではなく、支持率回復の機会を虎視眈々とうかがっている。院内外でアベ改憲の狙いや問題点をしっかり国民に知らしめるべく、憲法の平和主義、幸福追求権や生存権、労働権、教育権、地方自治など、平和憲法が活かされていない現実の状況をしっかり訴え、憲法の理念を現実の政治や生活に活かす「活憲運動」の一層の強化を図り、安倍首相の野望を断固阻んでいかなければならない。
■ 立憲野党(民共社由)連合こそ受け皿に
安倍首相は、当面、支持率の回復と政権浮揚を最優先に、様々な手を尽くし、支持率を回復できれば、「勝ちはしないけれど負けはしない」として、民進党の状況、野党共闘の展開、小池新党の準備次第では年内の解散も視野に入れてくる可能性はゼロではない。
一方、支持率急落に見舞われ危機的な安倍政権に対し、攻勢を懸けるべき立憲野党の状況は極めて不十分である。とりわけ民進党の内部で不協和音が広がり、事実上「1カ月の政治空白」を生み出すことになった。党の体制の立て直しを急ぎ、野党第一党として院内外の共闘のリーダーシップを発揮することが望まれる。野党共闘を深め市民と結束しなければ、アベ政治の暴走を止めることはできないのは、昨年の参議院選挙の1人区の戦いからも明らかな教訓である。誰が代表になろうと、選挙で勝つために、野党間の選挙協力と市民との共闘をしっかり進めていくほかない。
安倍首相を支持する理由で最も多いのは、「ほかに適当な人がいない」となっている。できるだけ早く四党の党首会談・幹事長会談を開催し、野党共闘の体制を確立し、目前の10月の衆院補選における共闘を確認すること、289小選挙区のすみ分け調整と実態に即した選挙協力を進めること、臨時国会でアベ政治の暴走を批判し、「国民生活優先の政治」について共闘することなどにより、立憲野党連合が安倍政権に代わる「受け皿」として、国民の信頼を獲得し、「政治が変わる」期待感・現実感を広げていくべきである。社民党は野党共闘の「要石」の役割をしっかり果たし、自らの議席増を勝ち取りつつ、改憲勢力に3分の2を割らせ、安倍政権を退陣に追い込む闘いの先頭に立っていく。
アメリカの大統領選挙における「サンダース旋風」や英国総選挙で左派色が強いコービン党首が率いる労働党が議席を伸ばすなど、福祉重視のリベラルの復権の動きが始まっている。様々な社会運動の高揚が立憲野党と新しい結びつきを作ることができれば、アベ政治の暴走を止め、改憲を阻止する大きな政治の変革を日本でも起こしていくことは、十分可能である。
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