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●2009年7月号
■政治転換へ 社民党の出番だ
  社民党副党首 又市征治
     

■ はじめに

「政治は一寸先が闇」という言葉を時々実感する。
 麻生内閣の支持率は、発足時50%前後からわずか4カ月余りで軒並み10%台に急落し、不支持率は70%台に上り、今年2月頃にはもう政権末期症状を呈した。ところが、3月3日に小沢民主党代表の公設秘書が西松建設からの違法献金容疑で逮捕され、これに対する小沢氏と民主党の説明責任の批判が高まり、この「敵失」で内閣支持率は4月には30%前後に持ち直した。これに勢いを得て、麻生内閣は過去最大の88兆円に上る09年度予算を押し通し、ついで14兆円余の補正予算で過去最大の選挙対策バラマキ策を打った。しかし5月中旬に民主党が代表を交代すると、再び内閣支持率は20%台へと下降線をたどり始めた。自民党の中からは「もう打つ手なし。4月に選挙をやれば良かったのに」の恨み節が漏れてくる。
 
 そんな中、6月12日、ぶれる首相は盟友・鳩山総務大臣を更迭する事態となった。そもそも国民共有の財産である郵政事業とその資産を食い漁るための民営化が原因で生じた不祥事・不適切な経営――
 
((1)「かんぽの宿」などの一括廉売の疑惑、
 (2)簡易保険の多額の未払い、
 (3)低料第三種郵便の不正認可、
 (4)西川社長出身の三井住友銀行とのカード事業などの癒着疑惑、
 (5)200億円以上の課税申告漏れと92億円の追徴課税、
 (6)現場労働者へのノルマ販売強制や事実上の首切り計画、そして
 (7)三事業分割によるユニバーサルサービスの低下など)
 
――は、社民党や国民新党などが追及してきたのだが、鳩山総務大臣はそのひどさにあきれ、この追及を背景に西川社長の再任を認めないと公言してきた。ところが、これを許せば「小泉改革が否定される」と自民党内から反発が起き、党内抗争を恐れた麻生首相は、不祥事を起こした西川社長にお咎めなく、それを正した鳩山大臣を更迭したのである。これに対して国民から当然批判が巻き起こり、支持率は再び10%台に低落したのである。
 
 かくして、今や世論は、「自公政権には辟易だ。民主党には不安があるが、ともあれ政権交代を」が大勢となってきた。6月16日の朝日新聞によれば、内閣支持率は19%(不支持65%)、政党支持率は自民党23%で民主党は28%、比例代表の投票先は自民党23%で民主党が43%といずれも民主党が自民党を上回り、また選挙後の政権の枠組みでは、自民党中心が23%に対して民主党中心が52%にまで上っている。
 
 追い詰められた麻生内閣に起死回生の妙手は見あたらず(野党のあら探しや内閣改造、麻生おろしで総裁選前倒しなども焼け石に水)、日が経つほど悪くなるため、結局は7月2日解散・8月2日総選挙か、7月末解散・8月30日総選挙を選ぶしかなくなったのではないか。わが党は8月2日を想定し、必勝に向けて全力を挙げていく。
 

■1. 新自由主義「構造改革」が社会を壊し経済危機をもたらした

 総選挙後の新たな政治を展望する場合、まず今日の世界恐慌をもたらした市場経済万能論の新自由主義、日本的には小泉「構造改革」路線の総括が必要だ。
 
 02年度以降、日本の大企業は「構造改革」の支援を受け、雇用・設備・債務の「3つの過剰」を解消するリストラ「合理化」によって、6年連続過去最高益を更新し、株主配当は3.6倍に伸ばし、役員報酬を増やし、かつ資本金10億円以上の企業の内部留保は140兆円にも上った。
 
 一方、勤労者の所得は10年連続で低下し、中でも年収200万円未満が5世帯に1世帯に、預貯金ゼロも4世帯に1世帯に拡大した。これは、経営側の厳しい賃金抑制に加え、正規労働者の非正規化が進められ、今や5100万勤労者の3分の1超=1780万人にも増大したからである。また、中小企業者も政府の輸出優先政策や大企業の下請け単価切下げ、内需低迷などで経営難に陥り、さらに農林水産業者も工業製品輸出優先策と食糧輸入自由化の大波で経営崩壊の一途を辿らされた。
 
 その結果、生きることに絶望して自殺する人が毎年3万人を超え、また凶悪犯罪・無差別殺人が年々増大する荒廃社会へと進んでいる。にもかかわらず、政府は、年金・医療・介護を次々と改悪し、また地方交付税を毎年5兆円も削って福祉・行政サービスを後退させ、地方も疲弊させてきた。今や新自由主義の破綻は明白である。
 
 社民党は、80年代以降の欧米の新自由主義の実態を教訓に、「小泉『構造改革』とは、大企業の国際的競争力を高めるために、あらゆる産業・企業でリストラ合理化を強化するものであり、その結果『弱肉強食の競争社会』が作り出され、またその延長線上に憲法第九条を改悪して『戦争のできる国』づくりを進めるものだ」と、当初から警鐘を鳴らして反対し「格差是正と所得再分配の強化」を訴えてきたが、残念ながらその指摘どおりの事態となってきた。
 
 因みに、野党第一党の民主党が「小泉改革は生ぬるい。スピード競争だ」と主張し、「小泉改革」の尻を叩いた責任は大きい。その自己批判的総括抜きに「国民の生活が第一」のスローガンを掲げても、国民はにわかに信用できまい。
 
 今こそ、憲法に保障された諸権利を盾に国民的な闘いを強めねばならない。
 
 例えば、憲法第二五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」、また第二六条の「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」、そして第二七条の「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」という諸権利の空文化が進んでいる。一生懸命働いても貧しくて結婚もできず、子どもを生み育てることもできず、そして雇用保険も適用除外という勤労者の犠牲の上に大企業がぼろ儲けを続ける社会を許してはならない。特に若者の2人に1人以上が非正規という事態は、今やすべての家庭の問題、深刻な社会問題となっている。この人々の底上げを抜きに労働者総体の待遇改善はない。社会民主主義勢力や労働組合はじめ市民運動、社会正義を求めるすべての人々の今日的課題ではないか。この闘いの強化なくして政治転換は望めないといっても過言ではない。
 

■2. 日米軍事同盟と改憲の動きが強まった

 そして私たちが指摘したとおり、「構造改革」と同時並行で、『戦争のできる国』に向かって日米軍事同盟と改憲の動きが強められた。
 
 具体的には、小泉内閣は、

  1. インド洋やイラクへ自衛隊の海外派遣を強行し、
  2. 戦時体制づくりに向けた有事立法を次々制定し、
  3. 在日米軍再編特措法で日米軍事一体化(自衛隊の米軍従属化)
を進めた。また安倍内閣は、「戦後レジームからの脱却」を唱えて、
  1. 防衛「省」昇格、
  2. 教育基本法改悪、
  3. 憲法改悪のための国民投票法
を相次いで強行した。そして福田内閣は、集団的自衛権の憲法解釈変更と海外恒久派兵法成立を志向したが果たせず、麻生内閣に引き継がれた。麻生内閣では、ソマリア沖アデン湾の海賊にこと寄せて
  1. 海外恒久派兵に道を開く海賊対処法
を強行しようとしており、また北朝鮮の脅威を口実に
  1. 「敵基地攻撃論」を煽り、その装備強化を狙っている。
さらに
  1. 憲法改悪案づくりに向けて憲法審査会の発足を急いでいる。
 
 これらは、「再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」国民の総意に基づいた現憲法を踏みにじり、軍需産業の要望にも応えて経済力に見合った軍事大国を目指す盲動である。例えば5月2日発表の朝日新聞の世論調査では、憲法九条を「変えない方がよい」が64%に上る(「変える方がよい」は26%)。こうした国民への挑戦と言えよう。
 
 かつて一方的にクウェートを侵攻し、また大量破壊兵器保有の疑いが持たれたイラク、そして9.11テロ事件を起こしたアルカイーダを擁護したアフガニスタンは、その善し悪しは別に、多国籍軍から壊滅的打撃を受け、政権が崩壊した。まして、憲法九条で戦争放棄を宣言している日本をどこかの国が一方的に攻撃すれば、その国は世界中を敵に回し、壊滅することは必定な国際情勢にある。つまり憲法九条は、どの国も日本を一方的に侵略も攻撃もできない防御力である。日本が敵対したり挑発しない限り、そんな愚かな行為を行う国はないのである。
 
 逆に、武力行使を認め集団的自衛権の行使を容認すれば、この前提は崩れる。
 
 もし日本が米国と共に戦争をするとすれば、「どうせやられるならば先に」と敵対国が決断した場合、その国は日本の軍事基地と原子力発電所を狙うであろう。原発が1基爆砕されると広島型原爆の1000倍以上の被害が生じる。もし北陸地方の24基の原発が空爆されると、連鎖爆発で日本の中央部は壊滅状態となる。
 
 今日、緊急炉心停止装置が働くから大丈夫だとの反論があるが、放射能飛散は防げない。そこでミサイル防衛論が語られるのだが、発射から5〜10分で飛来するミサイルを打ち落とすのは、銃弾を銃弾で撃ち落とすに等しく不可能である。
 
 そもそも憲法前文は、国際社会の「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」する努力を謳い、そして日本一国だけでなく「全世界の国民が、…平和のうちに生存する権利を有する」として、「自国のことのみに専念し他国を無視してはならない」と、国際平和主義の率先努力を求めているのである。
 
 

■3. 必要なのは社会民主主義的政策への転換だ

 このように、この10年来の新自由主義「構造改革」路線が社会のあらゆる分野に格差を拡大し、国民生活と社会保障を壊し、同時に日米軍事同盟の強化と改憲の動きを強めたことへの国民の強い不満・批判が、2年前の参院選で与野党を逆転させ、安倍、福田内閣を1年で崩壊させた要因である。
 
 だが、麻生内閣にこの反省は無く、「改革を否定するのではなく改革を進化させる」と、破綻した新自由主義を継承する姿勢である。鳩山更迭もその表れの一つだ。
 
 その観点で編成された今年度の予算は、補正を合わせて102兆円と過去最大だが、大企業の収益回復と選挙目当てのばら撒き満載で、肝心な格差是正や雇用の安定・創出、社会保障の拡充などで持続的な内需拡大・景気回復を図るという視点がない。そして積み重ねた莫大な借金は3年後からの消費税増税で取り立てるという。
 
 因みに、新自由主義の元祖・米国でも、オバマ政権は「グリーンニューディール」を提唱し、内需拡大・雇用創出を重視し、大企業や高額所得者に増税を、中間層以下には減税を掲げて国民の大きな支持を得ているが、これに学ぶ姿勢も全くない。
 
 こう見てくると、いま日本の政治に求められるのは、新自由主義政策の破綻を率直に認め、「弱肉強食の競争社会から平和で豊かな福祉社会へ」の転換、つまり社会民主主義的政策へ転換することである。
 
 したがって、総選挙後の新しい政権が目指すべき基本政策の柱は、最低、次のことであろう。

  1. 新自由主義「構造改革」と訣別し、内需主導型経済に転換する。
  2. 社会的に拡大した格差を是正し、国民生活と社会保障の再建を実現する。
  3. 不公平税制の是正など所得の再分配機能を強化し、財政支出の抜本的見直しで無駄を排除し、財源を確保する。景気後退を招く消費税増税は行わない。
  4. 第二五条(生活権)、二七条(勤労権)、九条(戦争放棄)など、憲法理念を体現する。
 これらを支持しその実現を求めて、わが党や労働組合・勤労国民が職場や地域などから声を大きく上げて頑張ってこそ、政治を変えることができる。米大統領選挙に見る国民の立ち上がりに学ばねばならない。
 
 これらについて若干付言しておきたい。
 
 前述のように、大企業は140兆円もの内部留保を貯め込みながら、一方では派遣をはじめ労働者の首切りと賃下げで減収を抑え、他方では国民の税金で首切りの尻ぬぐいや経済対策を政府に求め、麻生内閣もこれを推進している。逆である。今こそ政府は、企業の社会的責任を問い、賃上げや雇用の維持を求めるべきである。
 
 労働者を安くこき使って貯め込んだ内部留保の僅か3%=4.2兆円の拠出で、
  1. 200万円の年収なら70万人の雇用を守り、
  2. 月10万円の失業給付が116万人にでき、
  3. 1100万労働者に月1万円の賃上げ
ができるのである。とすれば国民生活と景気の改善に相当寄与できるではないか。こうした「所得の再分配」の強化を目指して全労働者が奮起することが春闘ではないだろうか。
 
 
また、改悪されてきた年金・医療・介護や雇用保険、生活保護など社会保障・セーフティネットの拡充は、格差是正の上で極めて重要だ。それは、憲法二五条で保障された国民の「健康で文化的な最低限度の生活」権を守らせる闘いだ。
 
 例えば、
  1. 平均月5万円にも満たない国民年金の現状、
  2. 一方で300万人もの失業者が存在し、他方で待遇が劣悪なため医療・介護の現場や農林水産業分野に人手が足りない実態、
  3. 公的部門の自治体や教育現場で増え続ける非正規労働者、不足する消防職員、
  4. 年収200万円未満故に年金・医療・雇用保険も掛けられない人々を生み出し、制度そのものを空洞化・破綻させている現実
などは政治災害であり、早急な改善が求められる。
 
 憲法理念を政治と暮らしに活かすことは、第九条だけでなく、今や第二五条、二六条、二七条など全体に言えることだ。憲法の各条項は国民が政治権力に守らせる内容を定めたものだが、ますます空洞化されてきている。「年越し派遣村」に見るように、憲法二五条の生存権や二七条の勤労権を保障する責務を放棄し、路頭に迷う人々にしぶしぶ手を差し伸べる政府に怒りを組織してこそ、政治が変わる。
 

■4. 二大政党への不安が75%以上に上る!

 今度の総選挙の最大の焦点は「政権交代」であり、今日的世論から見てその実現性は高い。では、民主党に政権交代すれば政治は変わるか。
 
 12月6〜7日の読売新聞と早稲田大学の世論調査によると、「これまで」の自民党には69%、民主には48%が失望し、「これから」の自民党には86%、民主には75%が不安だという。
 
 もう1つ、5月11日のNHKの世論調査では、『衆議院選挙後の望ましい政権』は、「自民党が中心となる連立政権」25%、「自民党と民主党による大連立政権」21%、「民主党が中心となる連立政権」20%の順で、「自民党と民主党による大連立政権」も、「両党いずれかが中心となる連立政権」も4分の1以下でしかない。つまり75%以上の国民が自民、民主両党に不安感を抱いており、国民の多様な声が政治に反映されていないことを示していると言えよう。
 
 そして、多くの世論調査では、比例代表の投票先が自民党よりも民主党の率が高い。すなわち「自公政権には辟易だ。民主党にも不安があるが、ともあれ一度政権交代をしてくれ」が国民世論の大勢と見るべきだろう。
 
 なぜ75%もの人々が民主党に不安なのか。それは、民主党の前原元代表がいみじくも述べたように「自民党と政策は8割がた一致する」からであろう。
 
現に民主党は、

  1. 小泉「改革」と同根の社会保障や福祉・行政サービスを縮小する「小さな政府」や「民営化」論の立場を変えていない。
  2. また市町村大合併で明白になった福祉・行政サービスの切り下げと地域格差の拡大にもかかわらず市町村合併論を下ろしていない。
  3. さらに大衆迎合で、50人以上の民間企業の平均でしかない「公務員給与の2割削減」論を掲げるが、これは勤労者全体の賃金を抑制し、年収200万円未満の人々の底上げを阻害するものだ。その延長で筋の通らない夏季一時金引き下げにも賛成した。
  4. 労働者派遣法の保護法化にも後ろ向き
……など枚挙に暇がない。加えて民主党は、
  1. 日米軍事同盟を重視し、有事法制、ミサイル防衛の予算化、防衛庁の「省」昇格などに賛成し、教育基本法改悪や改憲国民投票法案にも曖昧な態度であった。また国連決議があれば自衛隊の国際治安支援部隊への参加も、海外派兵恒久法にも基本的には賛成という態度で、自民党と大同小異である。
  2. さらに「衆院比例区定数の削減」論(180を100に)は、小選挙区制の欠陥(大量の「死に票」)を是正し、少数意見を議席に反映するしくみを否定するものである。
 その上、政局次第で方針がクルクル変わるから、これでは「政権交代しても政治・政策の転換はできるのか」という不安がついて回るのは当然である。
 
 だから、多くの国民は、民主党への期待よりも自民党への批判の受け皿として民主党を見ている傾向が強いのであろう(少し古いが、参院選直後の朝日新聞の世論調査によると、「民主党が議席を増やした理由」は、「自民党に問題がある」が81%、民主党の「政策に期待できる」が9%、「小沢代表がよい」が4%に過ぎなかった)。

 

■5. 社民党は「緊張感ある連立政権」で政治転換をめざす

 こう見てくると、社民党の存在と今度の選挙での前進が極めて重要である。正に社民党の出番と言える。
 
 衆院で民主党が過半数又は比較第一党になって政権を担うとしても、参院で民主党は過半数を持たず、採決のキャスティングボードを社民党が握っている。それ故に民主党は社民党に院内共闘と連立政権を呼びかけざるを得ないのが現状である。我々もこうした状況を踏まえ、国民生活改善や悪法阻止に向け、積極的に時には厳しい注文を付けつつ、野党共闘の要役として努力を積み上げている。
 
 最近、マスコミで「社民党は連立政権に参加するかどうか」があれこれ報道されるようになった。中には野党分断を企図するものもある。
 
 私たちは、既に06年2月の第10回大会において満場一致で採択した『社会民主党宣言』の中((4)改革の道筋)で、「国会・自治体議会における党の議席増を党活動の柱に据え、社会民主主義の政権を日本に樹立することを目指します。この過程において、新自由主義・新保守主義の政治の転換を求める政治勢力と連携し、主体性を維持しながら具体的な政策課題の実現を目指す、緊張感ある連立政権の形成を展望します」と確認しており、今更「参加するかどうか」は論外である。つまり社民党は「反自公の連立政権の形成を目指している」のである。
 
 しかもそれは、改憲への蠢きが根強い国会の現状を考えるならば、受け身ではなく主体的積極的でなければならないと言えよう。これ以上の国民犠牲や憲法改悪を許さない立場から、新自由主義・新保守主義の自民党と、様々な傾向が混在する「保守・中道」政党・民主党との「大連立」や「協調」を許さず、反自公の連立政権を形成する中で、参院状況を踏まえて「勤労国民の側にしっかり立て」と緊張感を持って民主党に注文を付け、政治転換を実現することこそが社民党の今日的使命ではないか。これは決して容易な道ではないが、したたかに対処しなければならない。
 
 政策が異なる政党が政権を共有しようとする場合、当然「政権政策の合意」が前提となる。私たちは、前述したように、今日必要なのは「弱肉強食の競争社会から平和で豊かな福祉社会」への政治転換だと考え、先に私見として四項目の柱を上げた。
 
 選挙戦の中では、目指すべき連立政権の基本政策(姿)としてこの4項目を掲げ、合わせて党固有の諸政策を広く訴え、支持を拡大していくべきであろう。
 
 選挙の結果、与野党逆転で連立政権協議となれば、社民党として国民に公約した四項目を基本に「政権政策の合意」を求めていく。その合意内容と、その実行を迫る発言力である獲得議席によって、連立政権参画か否かが決まろう。
 
 もちろん連立政権を目指すこととそうなるかは別である。すべては選挙が終わってからの判断である。
 
 なお、「選挙の統一マニフェスト」論があるようだが、現状の共闘政策の整理はあってよいが、これは複数政党不要論につながるもので、賛成はできない。
 
 選挙で民主党と競合しているのに連立政権を目指すのは矛盾すると言う声がある。しかし、政権交代が焦点の選挙で、反自公の連立政権に背を向けて支持拡大につながるであろうか。「二大政党だけでは政治は変わらない。民主党に不安があるからこそ連立政権に社民党がどうしても必要だ」「政権交代だけでは政治は変わらない。政治を転換するために社民党がどうしても必要だ」という点と、前記四項目を中心としたわが党の政策を一緒に強く訴えていく積極性が必要であろう。

 

■ おわりに

 今日、日本の国内総生産(GDP)は約500兆円で、国民1人当たり約400万円、4人世帯では約1600万円の年収計算になる。しかし平均世帯の年収は600万円に満たず、その40%足らずである。つまり日本を平和で高度な福祉社会に発展させる経済的基盤は十分にあるのに、国民が生み出す富が大企業や高額所得者に偏り、格差が拡大している。だから、「社会保障の拡充と所得の再分配」による格差是正という社会民主主義的政策が不可欠である。
 
 この観点から、三年後の消費税の増税、しかも段階的12%への引き上げなどは断じて許せない。その理屈付けに「中福祉・中負担」が上げられるが、その財源確保を言うのであれば、まず10年前の大企業の法人税や高額所得者の所得税の減税分(2.8兆円)を元に戻すこと、年金・健康保険・雇用保険料も払えない低所得者の最低賃金を時給1000円以上に引き上げて担税力をつけること、そして国や独立行政法人の一般会計・特別会計の無駄遣いを徹底して削減することなどが先決である。
 
 今度の総選挙は、「政権交代」を通して「政治転換」を実現する絶好のチャンスだ。子どもたちや若者が夢や希望を持てる社会、老後が安心できる社会、そして誰もが人間らしく働き生きられる平和で豊かな福祉社会に転換するために、何としても社民党を選挙区・比例代表で前進させて頂き、2桁議席獲得につなげたい。そのためのご支援ご協力を心から要請する次第である。
 

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