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●2009年5月号
■社民党の総選挙闘争勝利に向けて
  〜渕上貞雄社民党選挙対策委員長に聞く〜
     

■ 2009年度予算の評価と闘い

善明 国会では2009年度予算案、および関連法案が3月27日に成立しました。「ねじれ国会」を生かした野党共闘は、野党三党(共産党を除く)が提出した「緊急雇用対策等関連四法案」(与党多数によって否決された)、また、バラマキの最たるものである定額給付金反対等で野党が一致して、与党との対決姿勢を鮮明にして闘ってきました。
 
 ですが民主党小沢代表の公設第一秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕、起訴という事態を受けて、民主党はこれまでの対決姿勢は薄れ、09年度予算案、及び関連法案はさしたる攻防は作れずに、淡々と年度内に成立しました。
 
 国会の会期は6月3日まで残されており、これから後半国会に移っていくわけですが、そこでこれまでの国会審議で明らかになった09年度予算案をめぐる攻防点は何であったか、また、民主党小沢問題をどう考えるのかについて、お聞かせください。
 
渕上 社民党の09年度予算案に対する評価は、『社会新報』でも随時報道している通りです。09年度予算案は、その前の08年度第一次、第二次補正案に続く麻生3段ロケットの3段階として位置づけられています。その柱は米国発の金融危機が世界に広がり、これが実体経済に波及して世界同時不況の様相を強めています。これまで日本経済を牽引してきた自動車、電機産業なども大幅な輸出減から生産の縮小、業績の悪化を招き、これが日本経済全体の成長率を引き下げ、「不況」の再来となって現れています。
 
 こうした日本経済の落ち込みを食い止めるための景気対策等をいかに打っていくか、また、ここ数年指摘されている「貧困社会」の広がり、とりわけ労働者の雇用、福祉破壊に対して、どのようなセーフティネットを実行していくかが、09年度予算案で議論すべき中心的課題でした。
 
 麻生内閣の経済財政対策は批判されているように、基本的にはこれまでの新自由主義的経済政策偏重を踏襲しつつ、選挙に向けたバラマキを行おうというもので、これから日本経済社会が目指すべき中長期的なビジョンを示し、そこに必要な財政を投入するというメッセージは全く見ることができないものでした。相変わらず供給サイド(大企業)の成長に偏った経済財政対策となっています。その内容は選挙対策を色濃くしたバラマキ政治でしかありません。
 
 社民党はそうした批判をしてきましたが、それだけでなく、これまでの日本経済社会の在り方を見直して、外需、とりわけアメリカに過度に依拠した経済成長から、内需を拡大して持続可能な経済への転換を行うために、「いのちとみどりの公共事業〜ヒューマン・ニューディール」政策を国会で提言しました。それは日本の経済社会構造を内需型成長に転換するために医療、福祉、農林水産業、教育、環境分野などへの集中投資を行い、合わせて雇用機会を創出していくというものです。
 
 この政策は将来の日本経済社会のあり方を示唆したものですが、ただちにやれることも随分あります。例えば雇用、医療、教育対策などは国民合意を図りながら、緊急対策として実行できますし、しなければなりません。そのことを担保するためには全野党共闘は引き続き重要になりますし、総選挙で政権交代が必要になります。
 
 そうした中で民主党小沢代表問題が表面化しました。これについては「国策捜査」という指摘もあり、国民世論としても二分する意見があるものと思われます。ですが、これは「政治と金」の問題としてとらえることが必要です。国民はこのことを厳しく見ており、批判しているのです。
 
 政治に一定の金がかかるというのはわかるし、全部禁止しろとはいいませんが、基本的には企業・団体献金の禁止ということは大事なことだと思います。政治がそこから歪んでいるわけですから、歪む元をきちっと正したうえで、個人献金を中心とした制度改革をすることは喫緊の課題です。
 
 民主党小沢代表問題は、民主党が決める内部問題ですが、日本の民主的政治にとって大きな問題ですから、「国策捜査」といった批判はさておき、与野党を問わず政治家はまず襟を正すことが問われていると思っています。
 
善明 多くの国民が「政治と金」の問題に不信を持っているわけですから、社民党は従来から主張してきたように企業・団体献金禁止を訴え、国会でもこれを実効あるものにしていくために奮闘することが必要です。
 
渕上 民主党小沢代表問題は、権力は何をするかわからないという怖さの見本でもあることは確かですが、政治家が何か起こした時、党に自浄能力がどれだけあるかを国民は見ていますからね。やはり国民が知りたいところにはきちんと説明し、応えなければなりません。
 

■ 2009年度補正予算案と社民党の対応

善明 麻生首相は、09年度補正予算案策定を自民党に指示しました。そこには税制改正法案を含めるとしています。これは贈与税減税など、大企業、金持ち優遇税制を意図したもので、当然、野党は反対しなければなりません。また、その財源が問題になります。補正の規模は15兆円超ともいわれており、そうなれば09年度予算で国債は33兆円に達しており、合計で40兆円をはるかに超えます。これ以上の国債発行は国家財政の一層の破綻を招き、この後には消費税引き上げ等増税は確実になります。
 
 後半国会は与野党対立の激化は避けられず、政局は一気に解散・総選挙に直結していくことも予測されます。
 
 それはさておき、想定される09年度補正予算案に対して、社民党はどのように対応されるのでしょうか。
 
渕上 09年度補正予算案は、4月27日にも提出すると言われています。検討されている追加経済対策は、「雇用調整助成金」の積み増し等は含まれていますが、整備新幹線や高速道路、空港、港湾の整備、自動車の買い替え支援や省エネ住宅の助成などがあげられており、その中心は大型公共投資や業界支援策です。これは平時なら簡単には認められない巨額のもので、この「不況」を大義名分に、供給サイドを強化することで経済成長を図るという従来方式の横並びになる可能性があります。
 
 朝日新聞の社説(4月1日、「追加経済対策」)で批判されていますが、昨秋以来、政府は財政支出規模で12兆円、事業規模で75兆円にのぼる景気対策をまとめています。
 
 これがこれから実行されるのですが、選挙もあって規模だけが踊っていますが、これ以上の巨額な公共投資事業が本当に必要なのか、これが実効性あるものになるか、大きな疑問です。バブル期後の「失われた10年」に政府は総額130兆円の景気対策を打ってきましたが経済を立て直すことができず、巨額の借金を残しました。財政だけで成長率を高めることは限界にあることを教訓にしなければなりません。
 
 一方、予想を超える経済悪化の中で、失業率は2月に4.4%に高まり、有効求人倍率は0.59倍と悪化する一途です。1年後には失業率は6%に上昇するという予測も出されています。製造業での「派遣切り」・「雇い止め」は増大し、正規労働者の解雇も増大する傾向です。中小企業も一段と厳しさを増し、地方では医療破壊も急速に進んでいます。
 
 現在、必要なことは年金・介護など、国民の安心・安定を確保し、将来不安を解消していく社会保障の抜本的充実に向けて、制度改正と大規模な財政を出動すべきことではないでしょうか。
 
 雇用問題では、これ以上の失業者を出させないための諸施策を企業と政府に講じさせることが必要です。現下の企業の業績悪化でどうしても雇用調整が避けられない場合は、緊急的なセーフティネット網を充実させ、当面の生活と仕事を保証させることが必要です。
 
 また、09年春闘は「賃上げも雇用も」をかかげて闘った労働組合の頑張りもありましたが、企業の厚い壁に阻まれて「ベアゼロ」、「一時金の大幅削減」等で、労働者の1年間の実質賃下げは相当な額になり、生活が困窮します。これで消費はさらに冷え込み、経済成長率のさらなる低下に拍車がかかることになりかねません。
 
 こうしたことを考えれば、必要なことは労働者の所得減税やこの間の負担増の軽減を行うことです。
 
 09年度補正予算は、国民生活を防衛するとともに日本の未来を切り開く諸施策を中心にすべきですが、これらは麻生内閣、与党に望んでも聞き入れるとは考えられません。小泉・竹中路線が今の経済状態をもたらしたのですから、本来、政局が行き詰まれば、解散・総選挙を実施し、これらの政策選択を国民に示して審判を仰ぐことが普通なのです。
 
 麻生首相は、ひたすら経済対策を「政局の具にしない」といって、解散・総選挙を先送りしてきましたが、いずれにしても4カ月以内には総選挙が実施されます。そのことを展望して、後半国会では09年度補正予算案、労働法制改正案等で対案を含めて、闘っていくことになります。
 

■ 「ねじれ国会」で、社民党が果す役割

善明 参議院は野党が過半数を制するいわゆる「ねじれ国会」で、全野党共闘の役割は重要になっていますが、その立て直しを含めてどのように対応されていくのでしょうか。
 
渕上 全野党共闘については、その重要性は変わっていません。共産党と民主党の間ではいろいろあるだけに、できうる限り国会の中での全野党共闘ができる条件作りを、わが党はしなくてはいけないと考えています。
 
 今国会で(3月下旬には)年金記録回復促進法案(共産党を除く野党三党)、介護労働者人材確保特措法案(全野党)等を共同提出しました。社民党は「ねじれ国会」の中で全野党共闘の要になっているのです。
 
 国民の意識は、今「変えよう」というところにあると思っていますから、野党がそれにどう応えるかということです。党それぞれに違いはあっていいのです。しかし、とにかく大きな歯車を動かそうというところで一致して「変える」ということにならないと、せっかく参議院で与野党逆転している意味がありません。
 
 今までも与野党逆転はありましたが、野党の民主党が第一党になっての与野党逆転ですから、これまでとは違います。それだけに民主党の責任も重たいですね。
 
 そこでわが党の独自性をどう出すかということにあります。「ねじれ国会」をこれから先どうしていくかということになると、まだ知恵が出しきれていません。与党は与党らしい汗のかき方があると思いますが、すぐに数だけで決めようとして衆議院にもっていって再可決する。与野党で議論して、第三の道を探るということをしないのです。
 
善明 国民の民主党小沢代表の辞任を求める声は高まり、民主党の支持率も下がっていますが、一方で麻生首相の不支持率も依然として高く、国民はある意味で冷静に、自民党のこの10年間の新自由主義構造改革が何をもたらしたかを見ています。この流れは消えていないし、その中で社民党の主体性を強化することが大事だと思います。マスコミは社民党の果たしている役割を報道しませんから、社民党は宣伝扇動の在り方を改善して、情報が党支持者、国民に届くようにしていくことが必要だと思います。
 
渕上 新自由主義経済の弊害が明らかになってきて、雇用も家庭も地域もボロボロにされて、不安な社会になっています。だから今こそ社民党が、雇用の問題、地域の問題など、人間生活が崩されているところをどうしていくかというところをしっかり宣伝していくことが必要です。
 
 社民党が憲法九条を守ることは当然のことになっていますが、憲法一三条の幸福追求権、二五条の生存権や二六条の教育権、二七、二八条の勤労権が今こそ問われています。先ほども述べましたが、社民党として「命をどう大事にするか」、「生活をどう大事にするか」、そのなかで医療、福祉、年金など具体的な、セーフティネットのところをどうするか、を訴えていかなければならないと思います。
 
 しかし、訴える力が弱いので、なかなか伝わらない。そこである意味で社民党の顔である、住民との関係では最先端の自治体議員を増やす努力が大事だと思っています。社民党が国民にどのように映っているかは自治体議員の活動にかかっています。
 
 あと比例区の戦いをどう進めていくかという時に、わが党は都市も弱いけれど、最近では地方も弱くなってきていますから、中核的都市を中心にしながら、どうやっていくかということも考えています。小選挙区300のうち1割くらいにしか候補者を立てられないところが一番の問題ですが、小選挙区を戦わないで、比例の票だけ出すというのは難しく、一番苦労しているところです。
 
 支持母体であった労働組合の多くが民主党支持になったわけですが、その中でもこれまでの運動をどれだけ積み上げていくかでやってきました。これからもきちっとやっていきたいと思っていますが、平和の問題はもとより、他の党が言えないこと、例えば環境では原子力発電に反対と言い続けたい。しかし、これは逆に言うと、「何でも反対」と言われますから、それにどう打ち勝つかということでしょうね。
 
 頑張っているところはあるのですが、それが伝わらない、一般化されないところが歯がゆいところです。ここは党員と支持者の皆さんに協力をもらうしかありません。
 
善明 民主党と社民党の違いを明確にしないと、社民党の比例票はでないと言われています。民主党の性格を見ると、政権交代を第一義的に言っていますが、その理念は不明確です。社会主義インターにも入っていないし、社会民主主義とも言っていない。ここにある意味で限界があります。
 
 ですから小沢代表の「生活が第一」の内容は、社民党の政策に似通っては来ますが、社民党の基本的な政策を訴えていくことが、社民党の主体性ではないかと思います。
 
渕上 ソーシャルという言葉は民主党にはないわけです。われわれは「社会」というところに中心を置きたい。それは人間社会ですから、地域社会をどうしていくか、とか、もっとも粗末に扱われている、命と暮らしをどうしていくか、最低限をどう守りぬくかというところでしょうね。「ヒューマン・ニューディール」政策を提言していますが、これをどうわかり易く一般化していくかですね。
 
善明 労働法制改正問題についていえば、民主党は企業側に遠慮があるのでしょうか、どうも歯切れが悪いところがあります。今の企業の業績悪化ヘの配慮は必要でしょうが、それにしても労働者の生活が大変になっているわけですから、主張すべきことはきちんと主張すべきです。ところが民主党は企業にものをいうことが比較的弱い。労働法制の問題だけでなく、法人税の問題でもそうですね。憲法問題、平和問題では社民党の態度、政策とは大きく違います。
 
渕上 政策の違いというのは明らかですが、それを強調するかどうかはあります。外ではそれを宣伝しながらも、一致する政策を実現させるために国会共闘の努力をし、その成果を上げていることもあります。ですが結果的に大きな政党の成果だけになってしまうという矛盾があります。国会は数がものをいうわけですから、仕方がないかもしれませんが。
 
 それから政策を提案すれば、プロセスも示さなければなりません。野党だから、プロセスまで示す必要はないとは思うけれど、実際には求められます。
 
 昔、木村喜八郎さんが、「財源というものは、ないと言えばない。あると言えばあるものであって、政府の意思によって、あるいは国会の意思によって、財源が生じてきたりなかったりするものである」(元・社会党参議院議員)と言っておられた。まさにその通りで、国は「金がない。赤字だ」と言いながら、「ない」と言ってきた「埋蔵金」も出てきたし、定額給付金は2兆円も出しきるわけです。もちろん赤字借金はありますが、出る。そういう具体性をもっと出さないといけないのかなとは思う。しかし、そうなると現実的になって、「いったい何を考えているのか?」ともなるわけです。ここのところが、理想と現実の違いで難しい。
 
善明 共闘と主体性は社民党の中で整理すべきことであって、矛盾しないと思います。社民党の政策を通すためには力が必要で、共闘が必要です。しかし、違いは違いで明確にすべきです。この間、社民党はそれを実践されたのだと思います。日雇い派遣禁止では、社民党と民主党では原則禁止か、日数規制か、製造業派遣禁止等では対立点ははっきりしていました。社民党は原則禁止を主張し、その上でなお、共闘は追求された。社民党の方は譲っていないわけで、客観的な条件から民主党が、製造業派遣禁止も含めて議論していく方向に変わるようになったのが事実だと思います。ここには社民党としての先見性が示されており、主体性が堅持されています。
 
渕上 確かにそうですね。派遣法改正問題で党の主体性をもちながら民主党と精力的に協議しています。「政治と金」の問題でも企業・団体献金の禁止をめざしながら具体的な方策も提示し協議を呼びかけています。
 
 消費者庁問題では、政府案と民主党案の間に立って修正に汗をかいています。

 憲法問題では絶対に妥協はありません。社民党が「憲法九条を守れ」と主張し続けることによって、経営者の中にも、九条を守れという声は出てきつつあるので、頑張らなければいけないと思います。
 
 

■ 政権構想と社民党の主体性

善明 全野党共闘の次の問題として、選挙協力、政権構想をどう考えるのかということがあります。
 
 今回小沢代表問題が表面化する前では、マスコミでは「小沢民主党圧勝、自民党敗北」と言われてきた中で、政権構想が議論されてきました。2月に開かれた社民党の全国代表者会議の議論が『社会新報』に掲載されていました。選挙が始まれば、国民は選挙後の政権構想に注目するし、社民党は結論がどうなろうとも、はじめから「政権構想議論はダメだ」では国民から理解を得られないと思われます。
 
「ねじれ国会」の中でも、「よりまし」な国民生活を追求してきたわけですし、それとの関連でどのように整理すべきか、議論が必要ではないでしょうか。
 
渕上 デリケートな問題です。社民党は、八党一会派で細川政権に参画し、自社さで政権を握りました。最初のときの政権は、政治改革ということで「小選挙区制度」を入れた。これは現在、社民党が苦しんでいる元凶でもあります。
 
 そういう経験が1つあります。村山政権では、党の基本政策の在り方をめぐっての問題があった。党としては2回の経験から、連立政権にかかわる問題は明らかですから、それを踏まえた上で、政権にどのように参加するかを常に考えておかなければいけないと思います。ところが、わが党はあまり議論してきませんでした。
 
 昔は、「社会主義」という目標はありましたよ。ですが政党ですから、政策等を考えながら政権をどうとるかという議論が必要ですが、足りなかったと思います。1つは政権の組み方の問題を議論する必要がある。それから、連立政権を組むにあたってわが党はどういう態度をとるのかということがある。二大政党論への批判はありますが、当分は連立政権になるだろうと思います。
 
 連立政権に参加していくときに、これは選挙結果にもよりますが、参加するかどうかは別にして、あらゆる状況を想定して議論しておくことは大事です。今回はすぐにでも議論しなければと思っていたのですが、小沢問題が出てきましたから……。
 
 政党というのは党首が顔です。党首が党の性格を表しますから、自民党は麻生首相で支持率が大幅に低下しています(信頼がなくなり)。そのとき民主党は勢いがあったけれど、小沢代表の公設第一秘書逮捕問題で、民主党は国民からの信頼を失い支持率は低下する傾向になっています。
 
 しかし、国民の側はやはり「政治を変えないと、私たちの生活は悪くなるばかりだね」と思っています。「変えよう」、「変えたい」という意識は根強く変わらないのではないでしょうか。
 
善明 それは私もそう思います。先ほどの話ですが、政権構想でいえば、『社民党宣言』には「新自由主義反対の連立政権を追求する」と書かれていますね。
 
渕上 そうですね。『宣言』では、「新自由主義・新保守主義の政治の転換を求める政治勢力と連携し、主体性を維持しながら具体的な政策課題の実現を目指す。緊張感ある連立政権の形成を展望する」としています。その際に、どことは組める、こことは組めないとか、議論したらいいと思います。
 
 今までの2つの政権参加の反省に立って、どこと組むか、よりましなところはどこか、考えたらいい。そして、組むこともできるし、場合によっては組まないこともできるということが大事です。
 
 党内には「閣外協力でやったらいい」という話がありますが、大きく見れば閣内と変わらない。「閣外協力の方が拘束されない」という幻想がありますが、同じことです。閣外にいても、責任だけとらされることもあるのです。また、政権に入っていても大臣は出さないという手だってあるのです。一方、「閣外協力」というなら野党に徹した方がいいという意見もあります。これらの整理もできている現状ではありません。
 
 政権構想の議論は、どちらかと言えば社民党がどう生き残るかという問題になりがちですが、大事なことは国民が期待する政策を実現できるかという問題でもあり、当然、いろいろな角度から議論が必要です。その判断は三役会議、常任幹事会で相談して決めるということです。
 
 もともと社民党は上から決めることはなく、下からの討論を積み上げてくるわけで、今回は少し丁寧にやるということです。代表者会議では当たり前の意見が全部出たということで、この時期の議論としては有意義でした。昔みたいに賛成か反対かで激しくやりあうということではなく、いろいろな意見が出されました。
 
 選挙協力は選挙区によって状況が違うわけです。同じブロックの中でも、県によって違います。選挙区が戦えないところと選挙協力をしながら当選させようというところでは、発想が全然違います。1つにしろというのは無理があります。例えば、沖縄と東京では違う。しかし、東京では一緒にやったっていいではないかとなります。小選挙区では51%獲得しなければなりません。比例にしても10%のクリアが必要ですから、どうすればいいかという方法の中に選挙協力を入れているわけです。選挙協力は足して2で割れる話ではありません。
 
 そのうえでの連立政権ですから、参加するのだったらどういう仕方があるか、という議論が必要です。二大政党論を批判するのであれば、連立政権を考えておかないといけません。
 
善明 選挙結果のいかんによっては、政界再編もありうる情況と言われていますから、その判断は党の主体性が堅持され、党を支持してきた人たちに、分かり易い、支持が離れないやり方をしなければいけません。
 
渕上 そうですね。一般的に「村山政権はだめだった」と言われていますが、水俣の人たちは「村山政権がやってくれたから今こうなっている」と思っています。政治解決して、その上に立ってまた運動が起こっているのです。
 
 村山政権は、基本政策の転換――自衛隊容認があるもので、批判を受けていますが、解決させた、前進させた課題は結構あるのです。連立政権とはそういうものだということを申し上げているのですが、なかなか納得してもらえませんね。
 

■ 総選挙闘争で2桁議席を目指して闘う

善明 「ねじれ国会」で社民党が全野党共闘で果たす役割、政権構想論議でも肝腎なことは、社民党が総選挙で前進することが前提だと思いますが。
 
渕上 大きなことを言っても始まりませんから、現実に衆参の選挙を戦ってきて、今の地方選挙の状況などを考えてみて、確実なところを目標にして議席2桁獲得としています。小選挙区が300ある中で、現実問題として社民党が当選するのはごくわずかですから、比例区に集中しなければなりません。
 
11ブロックで1つずつの目標をもって、それを確実にしなければなりません。現在、議席のあるところは守りきって、議席のない北信越、北海道、東海、四国、中国で議席を獲得することです。北信越と東海は箸にも棒にもかからないということではありません。北海道は長期に考え、中国はブロックで1つ欲しいですね。四国は比例定数が減っているのですが、小選挙区12のうちで1つ何とかならなかと思っているところです。
 
 自治体選挙では、25歳の人が三重県伊賀市でトップ当選しているでしょう。東京小金井では返り咲きしているなど各地で頑張っています。来年の参議院選挙もどういう戦いをするのか早く決めて、候補者を決めなければいけません。いずれにしても、総選挙で頑張る以外に党の展望はありませんから、しっかり頑張っていきます。
 
善明 本日は、大変、お忙しいところ、貴重なお話をいただきありがとうございました。
 
 
(インタビュー 4月1日 議員会館
 聞き手:社会主義協会事務局長 善明建一)

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