■ サイト内検索


AND OR
 
 
 月刊『社会主義』
 過去の特集テーマは
こちら
■ 2024年
■ 2023年
■ 2022年
■ 2021年
■ 2020年
■ 2019年
■ 2018年
■ 2017年
■ 2016年
■ 2015年
■ 2014年
■ 2013年
■ 2012年
■ 2011年
■ 2010年
■ 2009年
■ 2008年
■ 2007年
■ 2006年
■ 2005年
■ 2004年
■ 2003年
■ 2002年
■ 2001年
■ 2000年
■ 1999年
■ 1998年


 


●2007年8月号
■ いま国鉄闘争は
           (国労長崎闘争団  山口利通)
 

■ はじめに  分割民営化から20年

1987年4月1日、国鉄の分割・民営化で多くの国鉄労働者が解雇されました。以来20年。今日まで国労闘争団員966名を含む1047名の労働者と家族のJR復帰への闘いは、闘争団員38名(1047名では44名)の死亡者など多くの犠牲を背負い、様々な困難を乗り越え、粘り強く闘い続けてきました。この闘いを支援してきたJRに働く組合員そして全国の支援共闘の仲間に感謝を申し上げます。

国労は、2005年9月の「鉄建公団訴訟」の判決後、国労や闘争団の中で政治解決実現に向けた団結の機運が醸し出されました。闘争団員はもちろん国労組合員に求められることは、この団結しなければならない、という機運を生かし切り「政治解決」を実現することであったのです。
この間、全国の36闘争団でつくっている闘争団全国連絡会議は、解決へ向けての具体的要求について議論をおこなってきました。

そして各闘争団・闘争団全国連絡会議幹事会などで討議し、2006年7月に「解決にあたっての具体的要求」を全国三六闘争団の総意として確立しました。その後、2006年7月の国労定期全国大会で、この「解決にあたっての具体的要求」は決定されたのです。

国労や闘争団全国連絡会議は、JR不採用事件の早期政治解決を図るためには、関係する労働組合、共闘会議、被解雇者が団結しなければならないということを意識し、国労・建交労・中央共闘会議・国鉄共闘会議(以上四団体)・闘争団全国連絡会議・鉄建公団訴訟原告団・運輸機構訴訟原告団・全動労運輸機構訴訟原告団(以上四者)が一同に会し、「解決にあたっての具体的要求」が「四者・四団体」で確認されました。
 

■ 「政治解決」にあたっての具体的要求
 
I・基本的態度
  われわれは、2003年12月22日の「最高裁判決」並びに昨年9月15日の「鉄建公団訴訟判決」、「ILO条約・勧告」を踏まえ、政府の決断により、解決を図ることを求める。

II・具体的要求
  解決に当たり、以下の通り具体的施策を図るよう求める。

一、雇用
(1)鉄道運輸支援機構、JR各社及び関連会社もしくはJR各社に準ずる条件の雇用を確保すること。
(2)被解雇者の運営する事業体及び新規起業に対し助成を行なうこと。
(3)雇用の確保にあたっては、高齢者、病弱者に対する配慮を行なうこと。

二、年金
(1)1990年4月以降も国鉄清算事業団職員同様の年金加入条件とし、被保険者資格期間(受給権)を回復すること。
(2)資格期間(受給権)の回復が困難な場合は、以下の取り扱いを行なうこと。
イ 現行年金受給者に対し、同年齢のJR退職者の平均受給額との差額を支払うこと。
ロ 今後年金を受けるものに対しては、JR社員の退職後の受給額との差が生まれないよう、差額分を支払うこと。

三、解決金
   解決金として以下のとおり支払うこと。
(1) JR不採用により受けた損害金を支払うこと。
(2) 精神的苦痛に対する慰謝料を支払うこと。
以上
 

■ 「四者・四団体」の総団結体制を確立
 
具体的要求は、一言で言うと、雇用、年金、金銭という内容となっています。闘争団員では、49歳以下が300名強、60歳以上が100名強、病気など就労不能な者が50人となっています。何としても、この問題が解決した時に「路頭に迷わない」ようにという具体的要求だということです。再び述べますが、「解決にあたっての具体的要求」は、三六闘争団として要求をつくったことに大きな意義があるのです。

2006年9月以降今日まで「四者・四団体」は、数度に渡って国土交通省・厚生労働省・鉄道運輸機構に対して「解決にあたっての具体的要求」を提出し要請を行なってきました。

今日まで政府は、闘争団などがまとまっていないことを理由に、解決へ向かわないという態度に終始してきました。この要請行動の中では、ILOに対して「四者・四団体」がまとまって解決へ向けて責任を持つことの報告、国内でも「四者・四団体」がまとまって行動や解決へ向けた努力をして解決するという決意でいることを強調しました。これに対して、国土交通省は、この問題は「やるだけのことはやった、済んだこと」と繰り返しながら、今度は「四党合意の総括は」「国鉄分割民営化の評価は」と切り出してきました。これらは、まさしく「四者・四団体」の分断を図ろうとする狙いは明らかですし、「抵抗」を示していると思います。

今後も、まとまっている「四者・四団体」の団結を壊そうとする様々なことが予想されると思います。これらに対して、しっかりと対応することが必要です。

この間、訴訟を行なっていない闘争団員の、新たな訴訟についても議論を深めてきました。闘争団全国連絡会議としては、「解決の出口まで三六闘争団がまとまっていけることが重要だ」ということで、そのための訴訟にしなければならない。訴訟形態については、当事者全体の団結を、より確かなものにするためにも、画一的に判断するのではなく、提訴していない個人の意志を尊重し、そのすべての意志が反映される内容となることを目的としました。そのために国労本部と闘争団全国連絡会議は十分な連携をとって、意思統一をはかりました。

結果として、2006年12月に「採用差別訴訟」(東京地裁の国労訴訟と横浜地裁の横浜人活訴訟)として545名の闘争団員・遺族が提訴しました。これで、1047名の被解雇者の大方が提訴したことになります。勿論、政治解決を基本としていますから、闘争団連絡会議の中には訴訟をやっていない団員もいますし、解決時はそれらも含めて取組み対応していくことにしています。

■ 7度目のILO勧告・報告を活かして

ILOは2006年11月に実に7度目となる「勧告・報告」を日本政府に出しました。

それは、「ILOの結社の自由委員会は、特に東京地裁の2005年9月15日付けの判決に留意する。委員会は、再度、委員会が1998年以来、同案件の2回の精密な審査と4回のフォローアップを行ってきたことを想起する。特に労使関係の分野では司法だけによる解決がそぐわない問題があることを強調しつつ委員会は、国労が直近の書簡の中で懸案事項について交渉を通じた政治解決を探ることを強く望んでいるとの表明を行なったことを歓迎する。さらに委員会は、その実現に向けて関係当事者を一堂に会させる上で国労がILOに援助とアドバイスを要請したことに十分に留意する。

委員会は、日本政府に対し、この長期化した労働争議を関係当事者すべてが満足する解決に到達させる観点から、このようなILO援助の受け入れを真剣に検討するよう要請する。委員会は政府に対し、この点についての進展を報告するよう要請する。」という内容のものでした。

この「勧告・報告」に対して、中山和久(早稲田大学名誉教授)氏は、「今回の結社の自由委員会七次報告は、1998年以来審理してきた1991号事件(日本)で、1047名の国労などの不採用事件について、政治的な最終的な解決のためのILOの『援助』を受け入れるように、日本政府の決断を求めている。先進工業国の代表として、1965年時代と違って、日本の国際的地位ははるかに高いものになり、その労使関係は国際的な注視の的になっている。日本の不当労働行為制度は、世界の中でも屈指の充実した制度として認められているにもかかわらず、全国の労働委員会によって1つの例外もなしに差別による不採用だと認められ救済された労働者が、裁判所の硬直した法解釈の犠牲となって、20年もの間、放置されてきた。最終的に労働委員会命令の取り消しを行なった最高裁判所判決でも、多数意見と少数意見の差はわずかに1人であり、さらにその後の東京地裁判決では不当労働行為の存在を認めているなど司法の領域でも判断の差は接近している。

だが、いつまで待っても司法による救済がもはや期待できないことを認識したILO結社の自由委員会は、今次勧告によって、重ねて政治的解決を促し、日本政府が協議による全面解決に踏み切るために、ILOの援助を受け入れるように勧告した。46年前のILOドライヤー委員会提案の受諾のシーンを髣髴(ほうふつ)させるものである。日本が先進国のひとつとして世界の尊敬を受け続けることができるかどうかの瀬戸際だといっていい。実際、不当労働行為によってこれほどILOの手を煩わせている先進工業国は他にない。損害賠償を請求するためにも、時効によって手がかりが失われるまでには、もう、僅かな時間しか残されていない。アジアで尊敬され、模範的な先進工業国として見習われる国であるためには、日本政府が石田労働大臣、佐藤栄作総理大臣の前例に従って、大きな政治的決断をすべきときが、目前に迫っているのである」と厳しく政府に述べています。

私たちは、ILOからも言われている「勧告・報告」を活用して日本国内で大衆行動、政治対策などをやり抜き解決への世論作りをすることだと思います。そのことから、首相に対する「1万人学者・文化人賛同アピール運動」(7月2日10690名を政府に提出)、自治体決議の採択は、北海道・岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬・千葉・東京・長野・山梨・静岡・愛知・大阪・奈良・福岡・佐賀・長崎をはじめ全国702地方議会、のべ1063本(18都道府県・219市395町・56村14特別区2007年7月2日現在)にのぼります。これら自治体決議も政治対策として活用し、国会議員などに解決を促す要請行動をする必要があります。また、節々で全国キャラバン、上京行動、集会などを取組み世論作りと併せて政府への解決を迫ってきたところです。

■ 今だから「政治解決」へ総力を

 2007年の今年、21回目のJRへの振り分け、いわゆる採用差別の「二・一六」を迎えました。今回は、「四者四団体」として「今こそ解決を!具体的解決要求実現をめざす二・一六総決起集会」を取り組みました。「二・一六集会」は、20年を越さないため、「具体的要求実現」のため、団結して解決をめざす「二・一六集会」とし1350名が結集しました。そこでは、統一的な行動を展開するため、「解決行動委員会」設置をすることを確認しました。

その後、この「解決行動委員会」を中心に、「四者・四団体」は、5月・6月行動として国土交通省前での行動、要請などを取り組みました。「政治解決」を求めるために、社民党・共産党・民主党の各野党はもちろん、与党対策も含めて取組んでいます。「政治解決は無理ではないか」という意見も少なからずあります。しかし、問題は、国労、闘争団員にとってもどうしても解決しなければならないということです。その意味で、民主党北海道議連や九州議連にも協力を頂いて、政治対策をおこなっています。

被解雇者は「具体的解決要求を持って本気で政治解決を求める」ことをあらためて確認していますし、解決の出口まで団結していくことも確認しています。
今求められているのは、評論家ではなく、情勢を、しっかり確認し、決意を固め、団結の力で様々な行動も取組むなかで、不採用問題の政治的早期解決を図ることに全力をあげています。また、不採用問題解決を社会問題化し、様々な闘いとの連帯を求め広めることです。

今日、安倍政権により格差の拡大など勤労国民に対する多大の犠牲が転嫁されてきています。教育基本法改悪や公務員制度改悪がなされ、労働法制改悪、憲法改悪などを行なおうとしています。その結果、年金問題や構造改革、そして規制緩和に対する批判が少なからず高まりを見せています。憲法九条擁護や改悪反対運動も広がりを見せています。このように、地道な運動の前進と国民生活防衛の社会的運動の活発化の可能性が出てきています。

国労は、「団結」した1047名の被解雇者と共に、大衆行動を更に発展させ、このような運動に積極的に関わりつつ勤労国民との連帯の結びつきを強め、共に闘うことであると思います。それが闘争解決の大きな背景になるであろうし、そうした運動を背景に社会問題化し、政府の責任による解決にむけた交渉テーブル作りを進め、JR不採用事件の政治的全体解決を図っていかなくてはなりません。

私たちは、私たちの置かれている現状を検討し、認識した結果として「政治解決」を求める以外にないという立場で運動を強化し努力しています。その運動の基盤に「団結」の存在を何よりも大切なものと位置づけています。

20年を越え闘ってきた国労闘争団の大半は、酷暑の九州と厳寒の北海道で働き、生活し、闘い続けています。この間、大きく異なる生活環境や運動環境から、意見の違いも表面化したこともありました。しかし、この機に何としても全面解決を実現するという決意の中から、今年3月には、厳寒の北海道に国労九州本部交流団8名が、5月には初夏の九州に北海道本部交流団7名が訪ね、それぞれの闘争団現場を目で見、肌で感じながら、率直な意見交換を行ないました。

3月の北海道交流では、「冬季の仕事がほとんどない。年間を通じた収入確保が困難な中で20年を闘ってきた」「心を1つにして、足並みを揃えていくことが必要」「この20年目の節目を何としても解決につなげたい」など率直な意見交換が行われ、音威子府闘争団との現地交流で九州の仲間は、「豪雪と厳寒、そして、1000人を切る人口の中で、事業体を設立しながら、地元で働き、長期に闘ってきた仲間の実情と苦闘に頭が下がる思いだった」と実感し感動したことが報告されています。

また、5月の九州交流では、参加した九州各地区本部代表・闘争団代表(26名)と北海道交流団が参加した交流集会と博多・長崎での現地交流が行なわれました。参加したそれぞれの闘争団から、20年に及ぶ各団の現状報告と厳しい生活実態が率直に出されると共に、この機に解決を実現させる決意を共通認識とした「国労のもとに総団結し、早期解決に向け闘い抜こう!五・二一アピール」を確認することができました。

国労闘争団員の大半(九州489名・北海道453名)が生活し、闘っている九州と北海道を相互訪問することによって作り出された固い結束は、この機に何としても解決を実現させる決意と団結を内外に示すと共に、中央における「四者・四団体」による政治解決実現の大きな力になると確信しています。

私たちは「団結と運動」で、「政治解決」を求めています。私たちの置かれている現状を検討し認識すれば、「政治解決」を求める以外にないと思います。

「政治解決」は私たちにとって確かに厳しい内容かも知れません。しかし、これ以外にないとすれば、私たちは政治解決に向って突き進むことです。「団結」は労働者に力を与えてくれます。団結の力で不採用事件の政治的早期解決を図りたいと考えています。全国の仲間の皆さんの支援と協力を再度要請いたします。

本サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
Copyright (c) 2024 Socialist Association All rights reserved.
社会主義協会
101-0051東京都千代田区神田神保町2-20-32 アイエムビル301
TEL 03-3221-7881
FAX 03-3221-7897