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●2007年2月号
■ 第166回通常国会の焦点と社民党の課題
     (社民党副幹事長 日森ふみひろ)
 

■ 1・ 第165回臨時国会をふりかえって
 
 社民党は衆議院で7議席、参議院で6議席と残念ながら少数会派である。臨時国会で焦点となった国民投票法案、教育基本改正案、自衛隊法の一部改正案、さらに共謀罪を新設する刑法改正案、いわゆる「四大悪法」の成立を阻止するには、社民党の独自性を活かしながら院内における野党共闘を機能させることが不可欠であった。
 
  その意味で、今年の参院選で自民党の過半数割れを自らの任務として、自民党との対決を掲げる小沢一郎氏が民主党の代表に就任したことは野党共闘の強化にはプラスであったといえる。
 
  教育基本法改正自体には、民主党が賛成であり、独自の改正案を提出していたことが野党共闘を困難にしていた。しかし「拙速な改正には反対であり。臨時国会での採決には応じない」と全野党で事前に合意することができたが、審議をストップさせ成立を阻止するという方針は確立できなかった。さらに特別委員会で審議が進められたため、審議時間だけは先の通常国会以来、着々と積み重ねられていった。
 
  受験対策のための未履修問題や教育基本法改正案に関するタウンミーティング(TM)における「やらせ質問」の発覚は、現在の政府に教育を語る資格があるのかという本質的な問題を提起した。業者の言いなりとなって税金を無駄遣いし、世論操作のために公金を利用したTMの責任者が現総理であることは、問題の深刻さを示すものである。
 
  しかし、政府は問題の早期沈静化に躍起となり、それを十分に追及しようとしない一部野党の姿勢は、与党による衆参両院における強行採決を許す結果となった。
 
  社民党は院内外での反対運動の強化をめざし、2回にわたって社民党主催の集会を開催した。日教組、平和フォーラム、市民団体等もそれぞれ反対集会を開催したが、与党が圧倒的多数を占める国会の力関係を逆転させる力とはならなかった。
 
 自衛隊法の一部改正については、防衛施設庁の官製談合、情報漏洩問題等、自衛隊をめぐる不祥事が続発するなかでの審議であったが、民主党がもともと賛成だったこともあり、たいした波乱もなく成立した。
 
  国民投票法案は、教育基本法改正案の影に隠れあまり注目を浴びなかったが、審議は続けられていた。特別委員会は、審議を促進するために小委員会を設け、実質的な修正協議に入り、自民、公明、民主による共同修正案の骨格が固まっているといわれている。枝野幸男民主党憲法調査会長は、「希望としては憲法記念日の5月3日までには国会で法律を成立させたい」との意向を表明している。通常国会で、審議の山場を迎えると予想される。
 
 野党共闘が有効に機能したのは、共謀罪新設を盛り込んだ刑法改正案である。これまでは共謀罪を新設しないと「国際組織犯罪防止条約」の批准ができないと説明していた政府が、米国の「国際組織犯罪防止条約」批准の際、共謀罪導入を留保した問題についてまともな説明ができないことに見られるような、政府の強引さについては日弁連をはじめとした世論の反発が大きく、審議入りを阻止することができた。

■2・ 通常国会をとりまく政治情勢
 
 1月25日開会、6月23日閉会予定の第166回通常国会は、4月の統一自治体選挙、7月の参議院選挙を念頭においた国会となる。安倍政権としては、延長が日程上困難なこともあり、参議院選を控え、失点することなく平穏に国会を閉会させることに全力をあげることになるだろう。安倍政権に対する支持率が、発足時から急激に低下し、追い討ちをかけるかのように安倍総理自らが指名した本間・政府税調会長、佐田・行革担当相の辞任がつづき、さらに政治資金がらみでスキャンダルまみれの閣僚がいるなかでは、平穏な国会こそが最良の国会なのである。
 
 しかしいざなぎ景気を超える景気回復といわれながら、その恩恵を一部大企業しか享受できず、働く者に実感がない事態は、日本経済にとってけして好ましい状態ではない。本格的な景気回復、具体的には個人消費の回復を待望する声は日増しに大きくなっている。それは基本的には賃上げによってしか実現できないのであり、主として民間労使関係の問題であるが、自民・公明連立政権が競争促進政策、弱者淘汰による経済の活性化をめざし、財政赤字の縮小を大義名分に歳出削減という名の社会保障システムの縮小と消費税等の大衆課税を強化するならば、政府自身が個人消費の低下を促進することになる。
 
 政権発足以来、安倍政権は国民生活の窮乏化を放置し、大企業も世界的な企業間競争の激化を勤労者にたいする恫喝に用い、いわゆる「上げ潮」路線でなんとかなるという無責任路線に終始している。他方で、教育基本法の改悪、改憲策動に見られるようにイデオロギー攻勢を強化している。これは国民に対する支配、管理の強化をねらっていることはもちろん、勤労者の窮乏化を政治の争点からはずすことや、保守的イデオロギーに共感する民主党の一部国会議員に対する揺さぶりをかける意味がある。
 
 その意味で、国民生活の再建に向けた政治への転換か、あるいは従来どおり国民生活を犠牲にした一部大企業の利益拡大による日本経済の発展、という見果てぬ夢を追い続けるのかが、通常国会では問われることになる。

■3・ 提出が予想される重要法案(継続法案を含む)
 
 この原稿を書いている時点では、通常国会に提案される法案の全容はまだ確定しない。したがって予想される範囲内で述べてみたい。
 
 ●1:07年度政府予算案関係
 07年度政府予算案に関しては別稿で詳細に論じられるだろうから、簡単に問題点のみを指摘しておく。
 
 安倍政権初めての予算編成だったが、その特徴を一言でいうならば、「企業減税など大企業優遇とばらまきとその一方での弱者切捨て、家計への負担転嫁である」(社民党幹事長談話)。
 
 日本経団連が1月に発表した「御手洗ビジョン」では、現在約40%の法人実効税率の10%引き下げを求めているが今回は見送られている。しかし、設備投資額全額の損金計上を認める等の減価償却制度見直しによる企業減税など、07年度に実施される減税の98%は企業向けになっている。今回の見直しは、設備投資額が大きい大企業ほど減税効果が大きいという露骨な大企業優遇政策である。また現在でも過当競争といわれているなかでいっそうの、国際的、また企業間競争を助長するものであり、果てしない競争にさらされる勤労者の労働・生活条件にまで否定的な影響を及ぼすことも見逃せない。
 
 家計への影響は、定率減税の廃止による所得税と個人住民税の負担増や、年金保険料の引き上げなどで、総額1兆7000億円を超えるといわれている。
 
 小泉政権は、5年間で1兆円を超える社会保障の自然増の圧縮、つまり社会保障の削減をおこなったが、安倍政権もその路線を踏襲している。生活保護費の老齢加算が04年度から段階的に縮減されてきたが、今年度をもって廃止された。今回新たに、持ち家に住む生活保護の必要65歳以上の高齢者については、自宅を担保に生活資金を貸し付け、死亡後に売却して返済にあてる「リバース・モーゲージ」(住宅担保年金)を優先的に適用されることになった。持ち家を使い切ってから、生活保護を受けなさいということだ。また再チャレンジ支援といいながら生活保護の母子加算が、就労支援を講じつつとはいえ3年で段階的に廃止されることになった。
 
  防衛関係予算は、時代遅れの正面装備を縮小し「贅肉」を落とす等で06年度当初予算より0.3%の削減となっている。しかしミサイル防衛関連予算が427億円増の1826億円となっている。また陸上自衛隊中央即応集団を新編成するなど、米軍とともに「戦える自衛隊」に向けた組織再編が促進されている。また在日米軍再編関連経費として72.4億円が別枠で計上されている。米軍再編に関連して今後3兆円に及ぶ支出が求められる可能性もある。
 
 ●2:憲法改正のための国民投票法案
 自民党は07年の運動方針案において「国民投票法案」の早期成立を打ち出した。また民主党自身も法案を提出しており、民主党の鳩山幹事長も早期成立に前向きな姿勢を示している。既述の通り、自民、公明、民主党間では、憲法に関する調査特別委員会の小委員会において実質的な修正協議に入っており、民主党が早期成立に賛成の態度を鮮明にすれば対決法案にならないだろう。そしてその危険性は、非常に高いと思われる。ただ参院選を前に与党との対決姿勢を鮮明にしたい小沢代表の政治判断がどうなるかは、まだ分からない。いずれにしても憲法改正に賛成であり、国民投票法案にも賛成という基本的立場は明確であり、よほど反対運動が盛り上がらない限り、反対と決めてもどこまで抵抗するかは不明である。
 
 社民党としては、投票法案の内容以前の問題として投票法案制定そのものに反対し、辻元議員がその立場から審議に臨んでいる。基本的には通常国会でも、その立場から審議に臨むことになる。
 
 自民党、公明党、民主党は、投票法案が手続き法であるから反対はおかしいという主張であるが、審議されている法案は明らかに手続き法の枠組みを越えている。具体的には法案のなかに憲法審査会の設置が盛り込まれており、審査会が設置されるならば直ちに改憲論議を恒常的に行い、改憲原案の作成に着手できる。最近の論議では、審査の機能は3年間凍結の方向で見直すという意見も出ているが、このこと自体、投票法案がたんなる手続き法ではなく、改憲法であることを明らかにしている。
 
 また内容についても自公案、民主党案の両法には多くの疑義がある。例えば憲法改正の発議には、両院議員の3分の2以上の賛成が必要ということをたてに、「公報」のスペースや政党による無料意見広告について国会の議席配分にもとづいて割り振ることや、広報協議会の構成についても議席配分による等としている。しかしこれは3分の2要件は発議の要件であり、その後の賛否については平等に扱われるべきだという基本的なことが提案者には理解されていないことを示している。
 
 また発議方法についても「内容において関連するごと」となっているが、どのような基準によって関連付けるかはまったく明らかになっていない。
 
 つまりそもそも修正協議の対象とはならない、両法案に共通な事項に深刻な問題点が存在しているのである。
 
 社民党としては引き続き投票法案の成立阻止に向けて全力をあげるとともに、両法案の問題点について追及していく方針だ。
 
 ●3:労働法制改正案
  労働法制改正における最大の争点は、「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入である。連合は、「労働時間規制を適用除外し時間外割増賃金を支払わない制度や企画業務型裁量労働制の業務制限緩和という、長時間労働を助長する法改正を行うことは認められない」(事務局長談話)と反対の立場を明確にしている。マスコミも「何よりも長時間労働と違法な残業代不払いを一掃することが先決だ。現状のまま導入されれば長時間労働を助長し、労働者の健康をむしばむ方向に流れかねない。新制度は不払い残業を合法化し、ただ働きを奨励するようなものだ」(「毎日新聞」06年12月10日号社説)と批判的だ。
 
 このような動きのなかで、与党内部でも公明党が慎重な態度をとり、自民党内でも参議院選挙を見据え慎重論が強まっている。厚労省は、この残業代ゼロ制度の対象を年収900万円以上とし、対象者は20万人程度で、実際に企業が適用するのは2万人程度だと反対論の押さえつけに懸命だ。連合は一度導入されれば年収制限は緩和されるとして、条件闘争には入らないと表明している。実際に導入が提案されるならば与野党が正面から激突する法案になることは間違いない。
 
「労働契約法」に関しては、労働組合に加入していない非正規労働者が増大する一方で、解雇など個別紛争が多発するなか、真に労働者と使用者が対等な立場で、雇用契約の基本ルールを明らかにする「労働契約法」の制定が求められてきた。
 
 しかし今回、労政審労働条件分科会が出した答申では、使用者が単独で作ることのできる就業規則の変更によって、労働条件の切り下げが容易に行われかねない内容になっている。これでは労働者の利益を守るどころか、使用者が圧倒的に優位な立場を利用し、「労使自治」の名のもとで労働条件を切り下げる道具になりかねない。
 
 パート労働法の改正についてまとめた労政審報告は、長期にわたって継続的に働いている「正社員的パート」に限って、「差別的取り扱いの禁止」を盛り込んでいる。しかし、残業・配点・転勤等の用件が含まれているため「正社員的パート」の割合は少なく、パート労働者1266万人のうち数%といわれている。
 
 その他、大半のパート労働者については、意欲や成果などに応じて、賃金は教育訓練などの面で、正社員との「均衡処遇」に努めるように企業に求めているのにすぎない。これでは、パート労働者のなかにあらたな格差を持ち込む恐れが大きくなるだけである。社民党は、同一価値労働同一賃金にもとづく「均等待遇」を強く求めていく。
 
 ●4:教育関連法案
 臨時国会で成立した教育基本法改正案は、いわば理念法であり、今後、30本以上の教育関連法の改正が予定されている。この通常国会では、学校教育法、地方教育行政組織運営法、教職員免許法等の改正案が上程される予定だ。とくに問題になるのは、教育委員会に対する文科省の権限強化や教員免許制度に更新制を導入する点だ。
 
 その他、自民党の公務員バッシング路線に呼応した公務員制度改革や社会保険庁改革法が提案される予定になっている。共謀罪を新設する刑法改正案は、参議院選挙を控えた国会ということで見送りになる可能性が高いといわれているが予断を許さない。

■4・ 統一自治体選挙・参議院選挙に向けた社民党の課題

 社民党は統一自治体選挙・参議院選挙を、「なくせ格差 つくろう安心 めざせ平和」をメインスローガンに、「人間らしく生き働ける『希望の社会』を、地域から」をサブスローガンに闘うこと決めている。
 
 安倍総理は、憲法改正を争点にすると述べている。もちろん社民党は受けてたつ構えであるが、この間、国民生活を破壊してきた自民・公明政権の責任追及は党の大きな課題だ。
 
 自治体議員の定数削減が平成の大合併や自治体財政の危機の名のもとで進み、自治体議員1人ひとりの役割が従来に比べて極めて大きくなっている。社民党全国連合が所属自治体議員に対して行ったアンケート回答者の約55%が統一自治体選挙の対象者となっており、自治体全体の統一率約30%を大幅に上回っている。
 
 地域によって事情は異なるが一般的にいって定数削減、議員の高齢化、後継者不足が大きな問題となっている。全国連合女性青年委員会では、全国レベル、ブロックごとの交流会の開催等を通じて青年党員の拡大、候補者発掘に努めている。今次統一自治体選挙でも各県最低1名の青年候補の擁立をめざしている。
 
 参議院選挙については、改選3議席にたいして7議席以上の獲得をめざして比例区9名以上(前回4名)、選挙区15名以上(前回公認10名、推薦6名)の公認候補擁立をめざして努力しているところである。
 
 中央段階では社民党を支持する労組は減少しているが、地域によってはさまざまな形態を採った共闘運動のなかで協力関係がつづいている。またさまざまな市民団体とのつながりも自治体議員を中心に維持、拡大してきている。
 
 そういうつながりを大切にし、憲法改悪問題に象徴的あらわされている、二大政党によっては代表されない勤労者の利益を代表する社民党の主張を鮮明にして選挙戦を闘う決意だ。

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