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●2006年8月号
■ 特集 第164通常国会を振り返って
   国会後の政治情勢と社民党の課題
   又市征治社民党幹事長に聞く
 
 
――本日は大変、お忙しい中にもかかわらず、時間をとっていただいたことに感謝申し上げます。
 
通常国会は会期の延長もなく終わりましたが、医療制度改革法、行革関連五法など重要法案が成立する一方で、教育基本法、共謀罪法などは先送りになりました。
 
早速ですが、第一六四通常国会を振り返ってみて、どういう国会であったか、論点を含めてお聞かせください。

 
又市
小泉内閣は、第164通常国会を5年間の小泉「改革総仕上げ」と位置づけていました。私たちから見ればそれは国民の暮らしと平和を破壊する「改悪総仕上げ」というべきものでした。
 
具体的に指摘すれば、(1)07年からの定率減税の全廃(増税)、(2)三位一体改革で一層の自治体締め上げ、(3)医療制度の再改悪、(4)一層の公務員叩きと公共サービス切り捨ての行革推進法、(5)アジア外交の破綻と、他方での米国追随・日米軍事一体化などを強行し、またわが党などの奮闘により結果的には成立しなかったものの、(6)現代版治安維持法とも言うべき共謀罪の創設、(7)子どもに「愛国心」を強制する教育基本法改悪、(8)憲法改悪手続きの国民投票法制定、(9)防衛庁の「省」昇格などを策してきました。
 
わが党を含む野党の力不足で、国民生活に多大な影響を与える税制、社会保障の改悪を許したことに大きな責任を感じています。ただ同時に指摘しなければならないことは、例えば、定率減税廃止、医療制度改悪などでは、実際に改悪が施行されて初めてその重大さに気づく、という国民意識のズレがあるということです。もちろん、われわれの宣伝・暴露の仕方、運動の進め方など、不十分さもありますが、これらについては、今後、運動の中で克服していくことが大きな課題となっているのではないでしようか。
 
■ 小泉政治が何をもたらしたか、五年間の検証
 
――そうした小泉政治に対して、社民党はどういうスタンスをとり国会論戦を挑まれたのでしょうか。

又市
そのことをお話する前に、この五年間の小泉政治を大まかに検証してみたいと思います。先ず、国民の暮らし向きです。今日、GDP(国内総生産)は輸出に支えられてバブル期をしのぎ、大企業は四期連続で史上最高の利益を上げています。しかし、その下で、完全失業者は依然300万人弱、不安定な身分の非正規社員は1650万人、勤労者の3分の1に膨れあがりました。そして、勤労世帯の収入は7年連続で低下し、特に5世帯に1世帯(18.1%)が年収200万円以下となり、また4世帯に1世帯(24%)が預貯金ゼロと、格差が拡大しました。自殺者も毎年3万人を越えています。
 
その結果、親の経済的困窮で文房具・給食費・就学旅行費などの就学援助費を受ける子どもがこの五年間で37%も増えて133万7000人(04年度)です。東京の足立区では42%に上り、ある小学校の6年生に卒業記念に将来の夢・希望を作文に書かせたら3人に1人が何も書けなかったと報告されています。経済格差によって小学生の時から夢や希望が持てない事態は、重大な政治問題と言わずして何というのでしようか。
 
こうした社会を生み出した人々に教育、教育基本法を語る資格など毛頭ありません。しかし、小泉首相は、「格差は別に悪いことではない」「成功者を妬む、能力のある者の足を引っ張る風潮は慎め」と開き直り、逆に医療・年金・介護など福祉を次々に改悪し、また高額所得者や法人税の減税はそのままに庶民の定率減税は廃止するなど、負担増と給付減を強行してきました。加えて行革推進法ではさらに公共サービスを切り捨て、また来年の参院選挙後には消費税率の大幅引き上げを準備しています。つまり小泉改革は、弱肉強食の資本の論理そのものであり、国民の暮らし破壊の政治です。
 
資本主義経済の本質は弱肉強食であり、必ず所得格差が生じます。だから、社会保障制度や応能負担による税制などで所得の再配分を行い、また最低賃金制とか労働時間や働き方の規制で、この格差を縮小することが政治の重要な使命なのです。
 
社民党は2月に第10回定期全国大会を開催し、当面、21世紀初頭で目指すべき社会像と理念、政策をまとめた「社民党宣言」を決定しました。このことを具体的に実践していくことが、実は第164通常国会でもあったわけです。国会に占める議席が少ないというハンディキャップはどうしても否めませんが、わたしどもは、これを大衆運動で補いながら国民の暮らし破壊に反対し、小泉改革と闘ってきたということが言えます。
 
 
■ 自民党圧倒的多数国会での社民党の役割
 
――小さくなったとはいえ社民党の果たすべき役割は高まっていることは実感できます。一方で野党第一党の民主党の評価について、お聞きしたいのですが。
 
又市
第164通常国会への民主党の対応は、国会前半は、対案路線で小泉内閣と「改革競争」を演じたのですが、稚拙な「にせメール問題」で前原代表が辞職に追い込まれました。代わって小沢一郎代表となり、政権との対決姿勢が取り上げられるようになっています。また小沢一郎代表になって民主党が変わるという見方があります。本来、野党は政権を厳しくチェックするのが使命ですから、対決姿勢は保守・革新を問わず当然のことです。
 
問題は対決の中身です。しかしながら、共謀罪、教育基本法、国民投票法などへの対案をみれば、小泉内閣と同じ土俵での改革競争です。そもそも首相に最短距離と言われた小沢氏が自民党を割って出たのは、この国に保守二大政党を作ることにあったのであり、いま野党第一党の代表となったことで、いまこそこの保守二大政党による政権交代をめざしているのです。持論である日米同盟の強化、自衛隊による「国際貢献」、小さな政府論、300自治体への再編、消費税増税などの政策は基本的に変わらず、その対決姿勢は参院選勝利に全てを優先したポーズにすぎません。
 
こうした中での社民党の役割を考えるとき、もしこの国会に、労働運動や民主団体に一定の影響力を持つ社民党が存在しなかったら、共謀罪創設、教育基本法改悪、憲法改悪の国民投票法、防衛庁の「省」昇格法などは、自民・公明と民主の三党の合意でアッという間に成立していたとの論評があります。政府・与党が出してくる法案の問題点をわが党が鋭く衝くことによってマスコミの論調が変わり、世論が変わり、そして民主党内に変化が起こってきたことが、今国会の終盤では顕著でした。共謀罪の強行採決を許さなかったのが、その典型例です。
 
ここに、社民党の存在意義と役割の重大さが明確になっています。このことに、社民党は自信と誇りを持って、全力で奮闘します。
 
――自民党は、ポスト小泉総裁選挙をめぐって、これからの国の在り方で、さまざまな議論があります。この議論に国民を巻き込みながら展開することで、自民党の求心力を強化していくという強さがみてとれます。社民党が、現在の自民党の新自由主義的政治を変えるために、どういう政策、運動をしていこうとされているのでしようか。
 
又市
小泉後の自民党政治は、基本的に変化はないでしょう。一握りの大企業の利潤拡大のために、「改革」という名で勤労国民を幻惑して、果てしないリストラ・合理化を進め、年金・医療・介護などの福祉を切り捨て、大増税を強要し、合わせて憲法を改悪して「戦争のできる国」への転換を急いでいます。こうした政治を打破するためには、次のことを重視していきたいと考えています。
 
 
■ 格差是正・均等待遇実現をめざして

又市
一つは、国民の暮らし破壊に対する反対闘争の強化です。小泉改革によって、いまや多くの国民が生活・雇用・将来不安を抱いています。しかし、政治に向くべきこの不安・不満が「改革」の美名に騙され、また正規労働者と非正規労働者、官と民などの巧妙な分断・対立攻撃に負けて、表面化していません。ここをなんとしても克服し、実態を顕在化させることが必要です。特にその梃子とされ、それを助長しているのが今日の公務員バッシングです。
 
そもそも、地方公務員を含む日本の公務員数は人口1000人あたり35.1人で、先進国の中では最も小さな政府です。このことと合わせて「小さな政府論」は、さらに公共サービスの切捨てをもたらすものです。これらのことについて、これまでの「官から民へ」の実態を検証して徹底的に暴露していくことが必要です。この面で労働側は決定的に立ち遅れています。
 
民主党も「3年間で総人件費2割削減」を唱えていますが、国家公務員の総人件費は年間5兆円で、その2割は1兆円です。これは国債残高約540兆円に比べれば焼け石に水です。むしろ莫大な公共投資による赤字国債の政府責任を追及し、年間220兆円を超える特別会計や一般歳出の抜本的見直し、大企業と金持ち優遇の税制改革などこそ強く問うべきと思っています。1650万人の非正規社員や中小企業主を公務員バッシングに動員していますが、これは公務員の賃下げで勤労者全体の賃金を抑えるためです。これで喜ぶのは大企業の経営者です。労働者が分断されるのではなく、大事なことは、年収200万円以下の低すぎる人々の賃金改善です。この低賃金構造が作られてきたことが、少子化の原因でもあるのです。
 
したがって、いま必要なことは、安心できる年金や医療制度の確立、消費税率アップ反対、正規雇用の拡大、均等待遇や最低賃金制などの国民多数の声を、労働組合が企業や産業を超えて、「〇大要求」の署名運動や大衆運動を地方から起こし、全国の運動に発展させることです。フランスでは「解雇自由」の政府方針を労働組合のストライキや学生の大規模デモで撤回させました。勤労者の32%もが非正規社員・低賃金という雇用構造の改善は、労働組合全体の使命です。
 
 
■ 九条改憲阻止と安全保障政策の運動
 
又市
二つは、広範な改憲阻止のネットワークづくりです。
自民党は昨年11月の立党50年大会で新憲法草案を決定しました。また民主党も昨年10月に「憲法提言」を発表しました。九条を改悪して武力行使を容認することでは、両党は共通しています。憲法改悪の最大の焦点が、第九条であることは明らかで、第二項の「戦力不保持」を180度転換して軍隊を保持し、集団的自衛権の行使を認めることです。このことに反対することは当然ですが、同時に大事なことは、もう一つの安全保障政策が重要になります。
 
国際紛争は武力をもって制圧しょうという米国にひたすら追従するのではなく、世界とアジアの情勢を冷静に分析し「戦争を回避する平和外交こそが全てだ」という平和憲法に立脚して、攻撃を受ける要因を解消する積極的平和外交を進めることが、政治の使命なのです。
 
余談ですが、昨年9月19日の「六者協議」共同声明の四項に、「六者は、北東アジアの永続的な平和と安定のための共同の努力を約束し、…北東アジアにおける安全保障面の協力を促進するための方策について探求していくことに合意した」が盛り込まれました。これは、議長を務めた中国の武大偉外務次官の説明によれば、社民党の北東アジア総合安全保障機構創設の提唱を入れたということです。この面でもわが党の野党外交の成果だと言えます。
 
話をもどしますが、05年10月5日の毎日新聞によれば、国民の改憲賛成派は58%、反対派は34%です。ところが九条改正賛成派は30%で、反対は62%、依然、1対2です。「戦争のできる国づくり」反対の国民運動を起こし、仮に国民投票になっても九条改悪反対に国民の過半数を結集することが、当面の最大の政治課題です。
 
具体的には、わが党や労働組合・民主団体が中心となって、各県で5月と11月に、「戦争のできる国に転換する憲法九条の改悪反対」などの新聞意見広告運動(1口1000円)を展開する(今年も25都道府県で取り組まれた)、それに参加いただいた2000〜3000人を中心に「平和憲法を守る(活かす)会」を県内各市町村に結成し、広げていく。これを全国的に結び付けて行けば、必ず改憲を阻止できます。私は昨年11月に憲法問題で「全国1000カ所演説会」を提起しました。06年二月末の集約で1700カ所を突破して、5月末で3400カ所に広がりました。これを教育基本法改悪、在日米軍再編に伴う基地機能強化・一体化反対の運動と結合し、さらに広げていくことが大事です。
 
――大変、具体的な提起で、社民党が何をしようとしているか、良くわかりました。そこで〇七年の統一自治体選挙、さらに参院選挙になりますが、この選挙で社民党の主張、運動をさらに広げていくことが必要です。現在、どのように準備されているのでしょうか。
 
又市
これまで述べたように、社民党が果たす役割は大きなものがあります。そうした役割を果たすわが党が、来年の統一自治体選挙と参院選挙でどれだけ議席を伸ばすかが、党利を超えて、日本の将来にとって決定的に重要です。全ての自治体選挙で議席を拡大する、参院選挙では、比例区で9名以上、選挙区で15名以上を擁立して、最低7名以上の当選を果たすことが至上命題です。そのために、9月までに広範な国民の協力を得て、300小選挙区での時局講演会、1万カ所街頭演説、500万署名・対話運動、党勢拡大などをなんとしても成功させたいと考えています。
 
――本日は、幹事長の明快な所信を聞くことができ、本誌の読者も元気づけられたのではと思います。幹事長のますますのご活躍を祈念し、インタビューを終了させていただきます。ありがとうございました。

(文責 編集部)
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