■ サイト内検索


AND OR
 
 
 月刊『社会主義』
 過去の特集テーマは
こちら
■ 2024年
■ 2023年
■ 2022年
■ 2021年
■ 2020年
■ 2019年
■ 2018年
■ 2017年
■ 2016年
■ 2015年
■ 2014年
■ 2013年
■ 2012年
■ 2011年
■ 2010年
■ 2009年
■ 2008年
■ 2007年
■ 2006年
■ 2005年
■ 2004年
■ 2003年
■ 2002年
■ 2001年
■ 2000年
■ 1999年
■ 1998年


 


●2006年3月号
■ 社会主義協会第38回総会挨拶より
格差を拡大する小泉構造改革に抗し、対抗軸の構築を――
               (社会主義協会代表 小島恒久)
 
 ■ 小泉構造改革の矛盾が噴出する今日
 
 春闘のお忙しい時期にお集まりいただきましてありがとうございます。
 
ここ1年をみても、われわれの周りの状況は大きく動いてきました。昨秋の総選挙では、小泉自民党が非常な大勝をはくし、その余勢を駆って造反議員を締め出して郵政民営化の法案を押し通しました。そういう状況の中で小泉の独裁体制がいよいよ強化されたということが一般に言われたわけです。
 
 だが、それで安泰かというと、その足下で次々といろいろな問題が噴出してきて、末期症状といわれるような状況も出てきています。耐震偽装事件がありますし、ライブドア事件がありますし、アメリカの骨つき牛肉の輸入問題がありますし、防衛施設庁の官製談合問題があると、相次いでいろいろな問題が出てきています。こういうものは小泉構造改革が産むべくして産んできた問題であり、矛盾であるといわなければなりません。
 
 例えば、耐震偽装問題をとってみましても、「官から民へ」と、民営化を一路進めてきた結果です。この「官から民へ」というのは、残念ながら国民の手にということではない。民間企業に譲り渡すということです。民間企業は、いかにコストを減らし、手抜きをやって、そこから儲けを得ようかとします。だから検査機関まで民営化すると、そこでコストを減らし、手抜きがおこなわれて、耐震偽装事件が起こってくるのは、ある意味では当たり前のことだと言わなければならないわけです。
 
 しかも「官から民へ」と言いながら、官僚の力はけっして弱っていない。依然として天下りは行なわれ、その天下りの手によって、例えば防衛施設庁の官製談合が行なわれているわけです。「改革」というのであれば、まず政財官の癒着構造の改革をやるべきなのですが、そうした肝心な改革は全くやられていないというのが小泉改革の実情です。
 
 ライブドアの事件にしたって小泉改革で産まれるべくして産まれてきた問題と言っていい。いわゆる「規制緩和」で企業の活動を大幅に自由化させていく。ホリエモンが羽目をはずしてやり過ぎたにしろ、やりやすい状況がつくられてきた、「規制緩和」されてきたわけです。ホリエモンは産まれるべくして産まれてきた鬼子です。
 
 しかも、小泉自民党は、ライブドアの成長を改革の成果だと、時代の寵児としてやたらに持ち上げた。ホリエモンが選挙に出た時だって、自民党は公認していないと言いながら、武部、竹中など小泉体制の中心的人物が選挙応援にいくなど、改革の見本として事実上持ち上げて選挙をやった。そういう点でも、小泉改革が産んだ申し子、鬼子と言わざるをえないわけです。
 
 ■ 格差社会の固定化、世襲化
 
  今日の世界は物の流通の何十倍という量でお金が流通し、これがキーボードの操作一つで世界を駆け巡っていくという時代です。お金は人間が産んだものであるのに人間を支配していく、この物神性――人間が産んだ神が人間を支配する――を『資本論』は強調し、われわれも強調してきたわけです。この物神性が行き着くところまで行っているのがいまの社会ではないかということです。そしてホリエモンが「人の心だって金で買える」と言ったような、野放図な驕りの状況が産まれています。その意味では資本主義の矛盾が行き着くところまで行き着いて、資本主義の矛盾というものをわれわれが知る上では、いまの社会は非常に大きな教材を提供していると言っていいように思うわけです。
 
 小泉改革のすすめる新自由主義、市場競争至上主義の中で、冷酷な弱肉強食がすすみ、富める者がいよいよ富んで行く。トヨタなどの大製造業、あるいは大銀行資本は史上最高という儲けを今日得てきている。独占体制がいよいよ強まっていくという状況であるわけです。であるのに一方では、格差が非常に大きく広がっている。大企業と中小企業、さらに中央と地方の地域格差もいよいよ拡大している。また貧富の差もいよいよ強まってきておるというのが目下の状況です。
 
 富める者はいよいよ富む一方で、貧しい者はいよいよ貧しくなってきている。その極の失業者が300万人いる、生活保護を受けている世帯が100万をこえ、自殺者も3万人以上という状況が一方で存在しておるわけです。格差がいよいよ広がり、「下流社会」と言われるところが増えていっているのが目下の状況ですね。
 
 階層分化がいよいよ強まって、しかもその階層分化が固定化して、一つの世代だけでなくて世襲化しつつあるというのが最近の状況になってきています。富める者の子どもたちは、学校にしたって職業にしたって恵まれた位置に就いていく。貧しい者の子どもは教育も受けられず、就く職業も下の方だという現実がある。つまり階層社会が固定化し、世襲化してきているというのが最近の一つの特徴になっているわけです。
 
 しかも小泉構造改革というのは、働く者、恵まれない者、弱い者へのしわ寄せをいよいよ強めるという「構造改革」です。働く者、貧しい者へのしわ寄せがこれでもか、これでもかという形でやってくるわけです。社会保障の切り捨て、改悪がどんどん進行していく。財政難を口実として増税という方向が出されはじめています。この増税ももっぱら大衆増税を強めて、高額所得者や法人税はむしろ減税しているわけです。
 
「資本主義社会というのは所得に非常に不均衡がある。これを税制や社会保障などを通じて所得の再分配をやっていく」というのが、国の本来の重要な機能であるわけです。これが逆になっている。小泉改革は富める者はいよいよ優遇し、貧しい者にいよいよしわ寄せしていくという、所得の再分配とは逆のやり方をやって、不均衡をさらに拡大している。小泉改革の5年間というものがどういうものであったかということは、いまや非常に明らかになっているわけです。
 
 ところがこれがなかなか一般に認識されていない。認識されないから小泉の人気もなかなか落ちない。マスコミの果たす役割も悪いと言えるわけです。こういう状況の中で先頃の総選挙のような結果が産まれたわけです。
 
こういう状況は、本来なら庶民の一揆が起こってもおかしくない状況です。ところが不満は鬱積しているのになかなかそうならない。この点についてたとえば中曽根は、「この頃の有権者を見ていると、かつての粘土のような状況ではなくて、砂のようなばらばらの状況になっている」と言っているわけです。そして「砂みたいにばらばらな状況になっているから、『小泉劇場』で煽られるとその砂が舞い上がって小泉の方になびいていく。こういうばらばらな砂的な状況が産まれている」と言っております。

 これは考えてみると、しかし、一般的な話ではなくて、労働者についても同じことが言えるのではないかという気がします。労働者の場合も、規制緩和によって労働者の持っている権利、保護というのが取っ払われて、資本がやりたい放題に首を切る。資本の思うままに労働者を働かせる。雇用の多様化という名のもとに、本雇いの労働者を極端に減らして非正規の労働者をふやし、非常に無権利で低賃金の労働者を産み出していく。しかもこれが組合に組織されていない。ですから組織率はいよいよ落ちていく状況が存在しているわけです。その無権利な労働者を、さらに今日の能力主義、業績主義といった労務管理でばらばらにしているという状況が存在しておるわけです。砂みたいな状況というのは、残念ながら労働者についてもかなり妥当するものを持っておるのではないかということをわれわれとしては考えていく必要があるわけです。

 しかし、これを放っておくわけにはまいりません。なんと言っても運動の中核をなすのは労働者階級です。ここをいかに階級的に強めていくかというのが、われわれ協会がかつてから追求してきた課題です。こういう労働者の状況になればなるほどそれをいかに強めていくかという課題がわれわれに課されているということです。
 
 労働者が砂みたいな状況になって、労働者が本来もつべき階級的意識、反独占という意識が薄れてきています。ところが、他方、大企業、独占資本、経団連の方は、いよいよ図に乗って結束を固めて言いたい放題のことを言い、労働者の要求を抑えてきています。そういう点では労資の階級関係というのは厳として存在しておりますし、資本の方はいよいよその意識を強めている。だのに、労働者の方がそういう意識が薄れていくのでは勝負になりませんから、われわれとしてはいかにこれを強めていくか、この課題を追求し続けていかなければなりません。そういう意味では、反独占という労働者の意識を強め、労働組合を階級的に強化するということが今日いよいよ重要性をもってきていると言っていいのではないかと思うわけです。
 
 ■ 小泉構造改革への対抗軸の確立を
 
  さらにそういう課題を強化するにあたっては、やはり闘争の政治化、政治運動に発展させていくことが重要です。そういう点では党の役割が非常に大きな意味を持つことは言うまでもありません。
 
 ところが、今日、最大の野党、民主党の言いかつやろうとしていることを見ますと、本当の意味の二大政党にはならんのではないかという気がします。民主党内にもいろいろな考えの人がいますが、前原民主党が追求しているのは新自由主義そのものです。小泉のやることでも「足らない」と言う。もっと徹底した新自由主義の追求、政治的にも新保守主義、集団自衛権を認め、憲法改悪を認めるという状況です。これは小泉路線に相対するという状況からはだいぶ離れている。むしろ同じ土俵の中にあると言わざるをえないのではないか。そういう点では、本当の意味の二大政党にはならんのではないかということです。
 
 本当の意味で二大政党と言うのであれば、小泉的な新自由主義路線、新保守主義的な路線に相対する対抗軸でなければなりません。これをどう強め、どう発展させていくかということが今日のもっとも大きな政治的課題と言っていいのではないかと考えるわけです。そういうものを、労働者階級を中心にしながらいかに広範に、今日の小泉改革の中でしわ寄せを受けておるところに広げながら作り上げていくか、そういう政治的な対抗軸をどう強めていくか、これがわれわれに課されている今日的な重要な課題と言っていいのではないかと思うわけです。
 
 むろん、これを実際に運動化していく場合にはいろいろな困難点がありますし、越えなければならない、いろいろなプロセスがあります。そういうものをわれわれとしては今日の状況の中でどう追求し、強化していくかが問われています。これは今日、明日の総合といった短い時間で十分に議論できるわけではありませんが、われわれに課されておる課題を皆で討議する第一歩にしていただきたいということをお願いいたしまして、私の挨拶といたします。よろしくお願いいたします。

本サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
Copyright (c) 2024 Socialist Association All rights reserved.
社会主義協会
101-0051東京都千代田区神田神保町2-20-32 アイエムビル301
TEL 03-3221-7881
FAX 03-3221-7897